賭事女王

GAMBLE QUEEN

Episode 10
(1999年12月13日放映)


■ 脚本 ■ 高木登

■ 演出 ■ 小林薫

■ 出演 ■
高倉紫乃:園原佑紀乃  高倉藍:木内晶子  高倉桃:内藤陽子  高倉朱々:一戸奈未
一馬:天野浩成  サミー:稲宮誠  師匠(猪熊伍郎):横山あきお  エメラルド:竹井みどり
トオル(桃の安全パイ君):久永輝明  トオルの彼女:中俣玲奈



 野球拳勝負、桃姐勝利の瞬間(高倉姉妹の「かっこいいー!」が明るいです!)。
 脱ごうとするダイヤさんに、母のことを教えて、と迫る桃姐。
 猪熊伍郎が全てを知っていると告げられる高倉姉妹。


 ボーリングピンが高らかな音を立てて飛ばされる映像。ストライク。
 笑う女性の、ぼやけた映像。笑いを含んだ「エクセレント」の声。


 そして場面は師匠ちゃんハウス。
 「師匠さーん」と声をかけて師匠ちゃんの寝室を上から(笑)のぞきこむ藍ちゃん。
 「やっぱいないねー」という桃ちゃんに、「おかしいなー、ここんとこずっと留守なんだよなー」と、膝を抱え込んで座ってる天野さん一馬くん。
 一馬くん、日頃から師匠ちゃんのおうちに通ってるほどなかよしさんなんですね!
 「あやしい。まさかゼロファミリーの一員とか!」と立ち上がる紫乃ちゃんに、人を疑うということを知らなさそうな一馬くん、まぁったく問題外という声で「えぇっ? まーさーかー」。笑顔がまたいいです!

 興奮して立ったり座ったりの紫乃ちゃんのお尻の下を気にしてる朱々ちゃん。
 味方のふりして敵に情報流してたりとか、としゃべる紫乃ちゃん(天野さん一馬くん、両手の指をきれいに伸ばして組み合わせたりして、神妙に聞いてます。紫乃ちゃんの言葉を継いだ藍ちゃんの話も、ちょっと口をとがらせたような表情で一生懸命聞いていて、とっても素直そう)のお尻をきゅっと掴むと、紫乃ちゃんひゃぁっと立ち上がって、「何よー、朱々!」
 「これ」と朱々ちゃんが差し出した黒い封筒には、黒いびんせんに白い文字で「戦いの場で会うことを楽しみにしています」。
 SM女王・ジョーカーさんも使っていた黒いびんせん、ゼロのオフィシャルグッズなんでしょうか。
 「やっぱり…」という雰囲気の中、桃姐が封筒から取り出したゼロのカードを、テーブルの上に、ばん、と叩き付けたところでOP。


 続いて桃姐の悪夢の中。
 ゼロの紋章の掲げられた場所で、雀卓を囲む桃ちゃんと師匠(タキシード的正装です!)。
 「やっぱり敵だったのね」という桃ちゃんに「そうじゃよ」と師匠。
 「母さんとはどういう関係なの!」と迫る桃ちゃんに「勝つまで秘密じゃ」。
 よぉし、とばかりに桃ちゃん、「リーチ!」。しかし師匠ちゃん「ロン。第三元。」
 「そんな…」と目を疑う桃ちゃんに「桃ちゃん」という女の人の声。みると、師匠ちゃんがお母さん声(?)で「桃ちゃん」。
 やめて、と繰り返す桃ちゃんに、お母さん声で「桃ちゃん。桃ちゃーん」を繰り返す師匠ちゃん(これはこわい!) やめてー! と絶叫する桃ちゃん。


 目が覚めると、そこは一馬くんの喫茶店(でも一馬くんは登場せず)。
 ゼロの挑戦状が来たという藍ちゃんと紫乃ちゃん。
 「今度の勝負はボーリング。勝てば、茜に会える。 エメラルド」の、白地に黒の大きな縦書きワープロ文字。
 …黒の便箋にミルキーペン文字は、ゼロメンバーのプライヴェート用?


 「でもさあ、ボーリングって、ギャンブル?」
 『賭事女王』視聴者みんなの疑問を明示的に口に出す紫乃ちゃんの声(思ったことは全部言っちゃいそうな紫乃ちゃん、わかりやすいです!)を音声に現れた場面は、プールサイド。
 「勝負を賭ければ、ギャンブルなんじゃない」という、理知的な説明は藍ちゃんから。
 そして水着の高倉姉妹、桃姐を先頭に水着とお揃いのカラーのダンベル(水を入れる透明タイプ。かわいい!)で「いち、に、さーん!」と、ボーリングの投球フォームのトレーニング!

 そこに「あれっ、桃」。
 桃ちゃん「トオル…」。朱々ちゃん「アンパイくん…」
 ミもフタもない朱々ちゃんの説明通り、そこに立っていたのは、桃ちゃんが第4話で朱々ちゃんに“いまのひと本名君?”ときかれて“ちっがうわよ、単なる安全パイ。いつでも切れるってやつ”と説明していた、安全パイ君(久永輝明さん)。
 「なにしてんの?」というあきれた声に「なにって…」と桃姐が口ごもっていると、笑顔とともに「こんにちは」とアンパイ君の隣に立った女の子(中俣玲奈さん)。
 「友達?」と訊ねるカノジョに、「ま、そんなもん。じゃな」と立ち去るアンパイ君。「うん…」と、ちょっと表情を陰らせている桃ちゃんの隣で、朱々ちゃん、屈託なく手を振ってます(笑)。
 立ち去る後ろ姿で、アンパイ君カノジョ「あの人達何やってるの」。アンパイ君「さあー」。
 …全く表情を変えることなくひょうひょうとこの場面の全てを通したアンパイ君、ほんとに桃ちゃんとは全くの“ともだち”だったのならいいとして、もし桃ちゃんとおつきあいがあってこれだとしたら、『ヤマダ一家の辛抱』の天野さんタケオ君なんか問題にならないほどの巨悪かもです(ほんとに、顔色ひとつ変えてません)!

 桃ちゃんは、「桃ちゃん?」と声をかけられても茫然と立ちつくしたまま。
 そして、「あたし、泳いでくる」。


 プールに入った桃ちゃんに寄り添っているのは、やっぱり気配りの人っぽい藍ちゃん。
 (そりゃあ確かに紫乃ちゃんとかは、麻雀勝負の最中に「だいたいなんなのその服、センス悪すぎ! だからいっつもここ一番ってときにオトコに逃げられんのよ!」とまで言われちゃあ、こういうとき桃ちゃんに親切にしよう、というキモチが起こらないのも無理ないかも…)
 「ねえ、あたしたちのお母さんって、どんなひと。あたし、母さんのこと、なんにも知らないんだよね」とはじめた桃ちゃん、「もう、何かわかんないことばっかだね!」…その笑顔が、ほんとに“こたえてます”という感じで、かわいそうです!
 そして見守る藍ちゃん、やっぱり優しそう。…こんな優しそうな藍ちゃんに、サミーさんのお店の使用料として売り飛ばされちゃう(第7話)一馬くんって、いったい。


 場面転じて、夜遅くハウスに帰ってきた師匠ちゃん。
 柱に刺さってる、第6話以来久々登場のGAMBLE QUEENカード。裏にはピンクのサインペン(丸っぽい文字。ゼロ側の女の人はきれいなペン習字文字なのと対照的!)で“ゼロのこと、私達の母、茜のこと、すべて教えて”の文字。


 橋を渡って勝負の場に向かう高倉姉妹。
 桃ちゃん「今日勝てば、お母さんに会える」。朱々ちゃん「絶対勝つ!」
 うなずいて決意する高倉姉妹の背後から「あら、早かったのね」と女の人の声。
 振り返ると、四人のお母さんぐらいの年格好の女の人が「高倉さんでしょ。ゼロファミリーのエメラルドです。よろしく。」
 そして「楽しみにしてたのよー。みんなで食べようと思って、お弁当作ってもってきたの」と、風呂敷に包んだ大きなお重を持ち上げてにこにこしするエメラルドさん。
 エメラルドさんはさらに「伍郎さん、まだみたいね」。
 紫乃ちゃん「やっぱり…」 朱々ちゃん「朱々達をだましてたんだ」
 桃ちゃん「師匠とゼロは…お母さんはどういう関係なの!」
 エメラルドさん「茜はあなた達を捨てて、ゼロのところに来たのよ。けなげね」
 そして「あなたがいいわ」と、自分が勝ったらゼロファミリーに来るようにと、藍ちゃんを指名!
 そして、自分は元プロボウラーだからハンデは礼儀と、最初の3回は自分はやらないと宣言。
 らっきー、という雰囲気に高倉姉妹がなっているところに、桃ちゃん「あたしが行く」。
 負けたら自分がゼロファミリーへ行くと申し出た桃ちゃん。「こんなのイヤなの! おっさん達だってあたし達を裏切ったんだよ。ワケのわかんないまま戦い続けるなんて、もうイヤ」
 そして藍ちゃんに(非常にまっとうな人選です)「だいたい藍ちゃんはなんで戦ってるの? 毎日毎日ギャンブルで、楽しいことなんてなんにもないじゃない」。
 藍ちゃんは「あたし達の戦いには、意味があるもの」と答えます。でも桃ちゃんは「意味? 恋もデートもできないで戦って、なんであたし達がこんなことしなきゃなんないのよ。だいたい血の宿命ってなんなの。超くだらないよ」。
 藍ちゃんは「お父さんのこと、忘れたの」と呼びかけるのに「賢さんはもう、死んじゃったんだよ。ばっかみたい、弔い合戦なんて」という桃ちゃんに、藍ちゃん、頬をぴしゃり。
 それを見て「藍…」とつぶやく紫乃ちゃんが、ありきたりのお姉さんぽくなくて、またいいです。
 「お母さんが生きてるなんて…思ってなかった」と泣く桃ちゃん。
 結局エメラルドさん「あなたでいいわ」と、桃ちゃんGETで了承。


 でも、勝負のときには、高倉姉妹、明るい表情です。円陣を組んで、「がんばろう」!
 勝負の審判は、やっぱりサミーさん。
 「それでは、ボウリング勝負を、はじめます!」と、一馬くんがいなくてもちゃんと、開始宣告してくれました(笑)!
 勝負は普通のボーリングと同じ1ゲーム、エメラルドさんは第3フレームまでは投げないルールをサミーさんが説明。
 「高倉姉妹、スローイング!」のポーズがチャーミングです、さみーさん!

 まずは藍ちゃんがストライク。
喜ぶ高倉姉妹に、エメラルドさん「うまいじゃない。なかなかきれいなフォームだわ」と、異様にフレンドリー。

 次は朱々ちゃんがスペアを取ると、エメラルドさん「あなたいくつ?」。朱々ちゃん、けげんそうに「じゅう、ろく…だけど?」。
 するとエメラルドさん「じゃあ、あなたが朱々ちゃんね」。うん、とうなずく朱々ちゃんに「さすが茜の子ね。たいしたものだわ」。言われた朱々ちゃん、すっごくうれしそうです!

 続く紫乃ちゃん、レーンのところまでボールを両手でもってきて、置く。
 「あ、行っちゃった」…ものすごく親近感がわく(守峰もボーリングのボールはそれしかできません。だって重いんだもん)投球フォーム(?)です!
 これには当然、桃姐が激怒! 「なんなのよ、あれ!」
 紫乃ちゃん、例によって例のごとくのお姉ちゃんぽくない口調で「だって転がっちゃったんだもん」。
 これで桃姐が許すはずもなく「なんであんな投げ方するのー!?」。紫乃ちゃん「だって爪が折れちゃうんだもん!」。…紫乃ちゃんらしいコメントです。
 桃姐「もう、真面目にやってよー! あたしがかかってるんだからね!」これは桃姐、当然の要求。
 それでも紫乃ちゃん「ネイルは女の身だしなみでしょ?」。…実際に危機が目の前に迫らない限り、妹よりネイル、それでこそ紫乃ちゃんです!
 が、おこられて当然な紫乃ちゃんにまでやさしかったのがエメラルドさん。「そうよね。女はそうでなくっちゃね」。
 そして自分も元プロボウラーだけどつい爪をのばしちゃって、コーチによくしかられた、と。
 優しく出られると紫乃ちゃんも素直になっちゃって「やっぱりのばしちゃいけないんだ」。「そうよー、折れて深爪したら大変よ。今度は切ってきたほうがいいわね」と言われると「そうね」ということきいちゃってます、紫乃ちゃん。桃姐に「だから出掛ける時言ったじゃない」と言われても、即怒らず!
 そうこうしているうちにエメラルドさん「あ、紫乃ちゃん」。指差す方向を見ると、とろとろとろとろ転がっていたボールがピンにやっと届いて、ゆるゆるとピンが倒れ…
 桃姐「ストライク!」
 そうなると現金なもので、やったー、すごいー、と手を取り合って喜ぶ紫乃ちゃん桃ちゃん(いいコンビです!)に、エメラルドさん「ラッキーね、紫乃ちゃん」。
 「そうぉ」とにっこにこな紫乃ゃんに、桃姐もうれしそうに「何喜んでんのよ 紫乃ちゃん」。
 その様子を、朱々ちゃんはにこにこして見ているものの、藍ちゃんは厳しい表情。


 第4回戦、高倉姉妹(ばーい サミーさん)でも、桃姐がストライク。
 「みんなすごいじゃない、驚いたわ」笑顔でというエメラルドさんに、藍ちゃん「そんな無理して拍手なんかしないでください」。
 「何よ、それ」ととがめる桃ちゃんに、藍ちゃん「だって敵じゃない」。
 「そんな言い方」という紫乃ちゃん(紫乃ちゃんがモノの言い方に気を使うなんて、レアです!)をさえぎってエメラルドさん「いいの。あたし、ちょっと馴れ馴れしくしすぎたわね。ごめんなさい」と頭を下げます。
 「そんなあ」という藍ちゃんに、エメラルドさん「子供がいたら、あなた達と同じぐらいかなあ、なんて思ったら、ついついうれしくなっちゃって。おかしいわよね、お弁当なんて作っちゃってはしゃいじゃって。恥ずかしいわ」と、笑みをたたえながらの述懐モード。
 「ねえ、みんなでそのお弁当食べない」という桃姐に、紫乃ちゃん「そうね。そうしましょ」(食べることに、紫乃ちゃんが反対するわけがありません!)。


 そして、しあわせそぉーうな朱々ちゃんの「おいしいー!」という食べ顔とともにお弁当タイムスタート。
 エメラルドさん、桃ちゃんに「はい」とお茶をあげて「ごはんちゃんと食べてるの?」。
 「最近、朝はあんまり」という桃ちゃんに、「だーめーよー、朝はちゃんと食べないと」。「でも 朝はバタバタするから」と桃ちゃんがいうと、エメラルドさん、お母さんのように「朝ちゃんと食べないと、勉強はかどらないわよ。」
 隣のテーブルでは朱々ちゃんが「紫乃ちゃん。ままりんって、ああいう感じなのかな」。紫乃ちゃん「うん、そうかもね」。一番上の紫乃ちゃんも、そういうコメントになるぐらい、高倉姉妹はお母さんなしで育ってきたんだなあ、と、紫乃ちゃんの笑顔が明るいだけに思わせます。
 朱々ちゃん「ね、これ、藍ちゃんの味とちょこっと違うじゃん。こういうの、ままりんの味っていうのかもね」。
 こくこくうなずく紫乃ちゃんですが、ちょっと気にして振り返った隣のテーブルでは藍ちゃんが「悪かったわね、ママの味じゃなくて」とやさぐれてます。
 その隣ではサミーさんが「だーいじょうぶよ。これだってたいしてうまくないんだから」。このサミーさんの発言(サミーさん、一馬くんのつくったごはんはもう食べたこと、あるのでしょうか!)、結構重要です!


 そして第4ゲーム。エメラルド、スローイング!
 というときになって「待て!」
 声の主、師匠ちゃんと、師匠ちゃんに続いて息を切らしての天野さん一馬くん登場!
 「師匠ちゃん!」と朱々ちゃん。「伍郎さん」とにっこりのエメラルドさん。
 対して桃姐は態度が硬く「いまさら何しに来たの? もう何言ったっておっさんを許さないんだから!」
 師匠ちゃん、抑えた声で「お前達の母親が、茜なのか」。
 桃姐「そうよ」。
 師匠ちゃん「そうか。血の宿命とは、よく言ったもんじゃ。」
 そして師匠ちゃんは語ります。23年前伝説の女ギャンブラーといわれていた茜さんとゼロが師匠ちゃんに挑んできて、師匠ちゃんが負けたこと。
 「仲間になれと言われた。ワシは断った」という師匠ちゃんに、その話をほんとうに一生懸命な顔で聞いていて「そうか。師匠、麻雀界をそれで引退したんだ。」という天野さん一馬くんの声も、いつものほがらかな一馬くんとちょっと違った、静かな気持ちのこもった声。
 その一馬君の腰を、サミーさんはしっかり抱いていたのですが、そんな一馬くんを無理矢理おさえつけたりしないで、手をゆるめてたり。
 …でも、天野さん一馬君がサミーさんの腕に置いた手もなんだかやさしく、この二人、ほんとになかよしさんになったんだなあ、と、しみじみ思われました。

 師匠ちゃんはなおも「結婚していたとは、風の噂に聞いていたが、こんなことになっていたとはなあ」。
 朱々ちゃんうれしそうに「やっぱり師匠ちゃん、ゼロファミリーなんかじゃなかったんだ!」
 師匠ちゃん「血の宿命。お前達はやっぱり、ギャンブルをやり続ける運命だったんじゃなあ」。笑っているような師匠ちゃんにしみじみ言われると、“血の宿命”も、お母さんとのつながりを感じさせるような、なんだかあったかいもののように思えてきます。
 それにこたえて藍ちゃん「ただの運命じゃないわ。あたし達が、自分で選んだ運命よ」。
 晴れ晴れとした表情で「運命に流されてるんじゃない。あたし達が、自分でギャンブルを選んだんじゃない」。
 そして、迷っていた桃ちゃんに語りかけるように「あたし達が。自分のこの手で」。
 紫乃ちゃんも桃ちゃんの肩に手をかけて「そうよ。こんなとこで立ち止まってる場合じゃないわ」。
 朱々ちゃん「そう。命短し、恋せよ乙女、って言うじゃん」。…朱々ちゃん…頭いいのかもしんないですが、理系少女みたいです…。
 桃ちゃん「何よそれ」。朱々ちゃん「あれ、違う? 美人薄命?」
 すっかり和んだ桃ちゃん「進んで行くしかないわね、勝負の道を」。
 うなずく高倉姉妹。


 その空気を打ち砕くかのように響く、ピンがボールに飛ばされる音。
 ストライクを示す赤いXが、ピンが消えたレーンの奥の暗闇の上に、凶凶しく点灯。
 みつめる高倉姉妹。
 そこには、銀色の衣装に身を包んだ(それまではピンクのポロシャツに白のミニスカートだったのに!)エメラルドさんが冷たい声で「話は終わった?」。
 そのエメラルドさんは特撮的“変身”を遂げたとしか思えない豹変。銀色の衣装(でも、それほど特異ではないはずなのに!)に、グリーンのカラーコンタクトだけで、特殊メイクまで施したかと思われるほど“変身”を感じさせて、すごいです!

 「虫酸が走んのよね。そういう家族ごっこ、って。」語尾を明瞭に切る口調、さっきのお母さん的情緒のかけらもありません!(でもそれがまた、カッコよかったりもして!)
 思わず「エメラルド、さん?」と問いかけてしまった桃ちゃんに「馴れ馴れしく呼ぶんじゃないの。あんたはただの、ゲームの景品なの。わかる?」
 「何よそれ」という桃ちゃんに、威勢の良さはなく。
 「ホントの勝負は、これから。」と、おどけているかのようにさえ聞こえる口調で明瞭に言ってから、不意に声を落として「覚悟しな」。
 エメラルドさん、高倉姉妹とは格が違うとしか言い様のない迫力です。
 呆然とする高倉姉妹。
 くっくっと笑うエメラルドさん。


 円陣を組んだ高倉姉妹、桃ちゃんの「絶対勝とうね」に、「おー!」。
 藍ちゃんのストライク、朱々ちゃんがスペアを外し、紫乃ちゃんがおそらくはガーター…
 その間に着々とストライクを重ね、会心の笑みを浮かべるエメラルドさん。


 暗がりに青く光る、スコア表示。
 天野さん一馬くんの「負けてるよ。しかももう最終戦だ」。
 その沈んだ声には、勝負のことがわかっている思慮が。
 師匠ちゃん「まずいな」。その声に顔を向ける天野さん一馬くんの表情にも、状況が表れてます。


 高倉姉妹で最初に「まずいよこれ」と声を上げたのは、日頃はお気楽な朱々ちゃん。
 「どういうこと?」と全く危機感のない声の紫乃ちゃんに、「桃ちゃんが3回ストライクを取らないと、もうこっちに勝つ可能性はない」。
 さすがにこれには桃ちゃん「えっ?」。


 サミーさん、師匠ちゃん、一馬君の三人。
 柵にひじをついてうつむいている一馬君の隣で、師匠ちゃん「この3回のチャンスを使い切ったとしても、エメラルドがそのあと1本でも倒したらおしまいじゃ」。
 サミーさん、ため息をついて「そういうことになるわね」。
 顔を上げて二人の言葉に反応する一馬くんの表情も含めた三人の姿が、ひとつのドラマのよう。


 「そんな! あっちはこれまで全部ストライクなのよ、一本も倒せないわけないじゃない!」と立ち上がる藍ちゃん。
 「じゃあ、もう勝てないってこと?」と泣きが入る紫乃ちゃん。
 それでも桃ちゃんは「まだ勝負は決まってない」。そして、「勝たなくちゃ、絶対」。
 うなずきあう高倉姉妹。


 「続いて最終戦。先攻・高倉姉妹」。サミーさんの声も、違います。
 桃ちゃん「ストライクしかない」。
 祈る高倉姉妹。
 しかし。


 無情に残る、一本のピン。
 「9本…」
 桃ちゃんのつぶやき。


 「勝者、エメラルド」。サミーさんが初めて、ゼロ側に勝利を宣する声。


 茫然とする高倉姉妹を、エメラルドさんは笑う。
 「茜の娘なんて、まあこんなもんよねー。あーあ、ガキの相手は疲れるわ」
 そして、桃ちゃんにゼロの手下を差し向け「約束よ。おいで」
 桃ちゃんに駆け寄ろうとして、ゼロの手下の女性におさえられる高倉三姉妹に、にっこりと笑いかけたエメラルドさん「おいしかった?」
 「何がよ」とむっとする紫乃ちゃんに、エメラルドさん「コンビニ弁当の味は」。
 朱々ちゃん「ひどい…」。この言葉は、やはり、ままりんの味を夢見た朱々ちゃんから。
 高笑いするエメラルドさん。


 ここで、天野さん一馬くん達のすがたが映し出されます。
 立ち尽くす師匠ちゃん。姉妹のほうへと歩み寄ろうとする一馬くんの前に腕を斜めに渡して、行かせないサミーさん。とめたサミーさんに抗議するように顔を見る一馬くんに、静かに首を横に振るサミーさん。
 ほんの1、2秒のシーンなのに、気持ちの動きがあざやかに伝わってくる絵。


 連れて行かれかけて「いや!」と、ゼロの男の手を振り払って戻ろうとする桃ちゃん。
 桃ちゃんへの行方を阻むゼロの女の腕を押して「桃…! 返してよ、桃…!」と、泣き顔で桃ちゃんの方へ向かおうとする三姉妹。
 泣きながら、「嫌!」と叫びながら連れて行かれる桃ちゃん。床に突き飛ばされて、「桃!」と叫んで、泣き崩れる姉妹。


 『賭事女王』前半終了の、to be continued。