賭事女王 GAMBLE QUEEN |
Episode 17(後半) (2000年2月28日放映) |
■ 脚本 ■ 羽原大介 ■ 演出 ■ 小林薫 ■ 出演 ■ 高倉紫乃:園原佑紀乃 高倉藍:木内晶子 高倉桃:内藤陽子 高倉朱々:一戸奈未 瑠璃:浜丘麻矢 サミー:稲宮誠 猪熊伍郎(師匠):横山あきお 万田一馬:天野浩成 茜:奈美悦子 |
高倉姉妹カラーの机を横一列に並べての朝食シーン(EPISODE 7にあったような)。 今日は、朱々ちゃんはヨーグルト食べてたりするものの、みんなお椀がのってたりと、やや統一感のあるメニュー(笑)。 紫乃ちゃん、うれしそーうな思い出し笑いをしながら「きのう一馬に、愛の告白されちゃったの」。 思わず紫乃ちゃんのほうを見た高倉姉妹に、紫乃ちゃん、きのうの「へ?」はなんだったの、といいたくなるうっとりモードで「駆け落ちしよう、って言われたのー」。 うっとり紫乃ちゃんに、意外や意外、朱々ちゃんががたりと音を立てて立ち上がって「駆け落ちぃ!?」。これまで何があろうと超ポーカーフェースで通していた朱々ちゃんをあんなに驚愕させた一馬くん、すごいです! でも藍ちゃんは「大きな声出さないでー」。二日酔いです! 朱々ちゃん「ごめん」とヒトコトあやまってから「行くの?」。 紫乃ちゃん、うれしそーうに(重ねていいますが、きのうの「へ?」はなんだったんでしょう…)「どうしよっかなー」。 そんなうっとり紫乃ちゃんに、桃姐、思いっきり冷たく「おしあわせに」。 当然のことながら紫乃ちゃん、激怒です!「何よそれ!」 桃姐「逃げたきゃ逃げればって言ってるの」、紫乃ちゃん「だから逃げるんじゃなくってー」、桃姐「好きにすれば」、紫乃ちゃん「あんたに言われなくたってするわよ!」。いつもの紫乃ちゃん桃ちゃん戦争、勃発です! が、いつもとちょっと違うのが、朱々ちゃんが一生懸命止めに入ってるところ! 「ケンカやめてよ!」という言葉、かなり真っ当でおとなっぽいです! で、いつもだったらその役割をしそうな藍ちゃんは「もう、大きな声出さないでって」。 これには桃姐キビシク「自分が飲み過ぎるからいけないんでしょ!」、紫乃ちゃんも「くこんな時によくそんなに飲めるわね!」。藍ちゃんがさらわれたとき、一馬くんの喫茶店でごはんを食べようとして「よくこんなときにもの食べる気になるわね!」と桃姐に非難されていた紫乃ちゃんとは思えない非難です! これには藍ちゃんもむっとして「こんな時だから飲みすぎちゃったの!」 ひとりみんなをまとめようとする朱々ちゃん(というあたり、高倉姉妹としては非常事態です!)、紫乃ちゃんに「駆け落ちするの?」、藍ちゃん「しないでしょー」、桃姐「好きにすればいいのよ!」、朱々ちゃん「朱々は反対!」(真っ当です!)。 紫乃ちゃん「もーう、うるさい! 自分のことは自分で決めるから!」。怒ってます! そして場面は、美しい並木道。 並木道を向こうから歩いてくる紫乃ちゃんに、木々の間に置かれたベンチから立ち上がって迎える一馬くんの「ごめんね、急に呼び出して」という声も、そういう美しいロケーションにふさわしい、とってもちゃんとした大人の男の人の、かっこいい系の声です。 が、それに紫乃ちゃんの反応は、死ぬほどうっとうしそうな「何ーぃ」。朝ごはんの席でのあのうっとりした表情はいったい何だったのか、全くわかりません、紫乃ちゃん!(単に、妹達への自慢!?) でも、それっくらいのことでめげていては一馬くんはつとまりません! 「これ」と、箱を差し出します。モノが出てくると、紫乃ちゃんの表情、微妙に変わります(笑)。 一馬くんに、ちょっと目を伏せたりしてのきれいな笑顔で「あけてみて」と言われて、黒い箱にかけられた赤いリボンを解く紫乃ちゃん。 箱をあけると、そこにはアメジストの指輪! 「あたしの誕生石!」と、一瞬にして表情が輝く紫乃ちゃん(笑)! 「くれるの!」という声はそれはもううれしそーうな歓喜の声で、さっそく薬指にはめて、手をかざしたりしてます! そんな紫乃ちゃんをじっと見てる一馬くん、ちょっとおあずけ状態みたいで、とーってもカワイイです(笑)。 でも、その状態から出た「俺、本気だから」という言葉は、ちょっとコワイ系ぐらいの表情から告げられて、ものすごく真剣。 でも、一馬くんがどんなコワイ顔をして真剣な気持ちを告げても、紫乃ちゃんの反応は異様に冷めた「えっ」。あの歓喜の表情は、純粋にモノをもらった喜びだったんだね、とはっきりわかる、すばらしいリアクション(笑)。 でも、一瞬後には、一馬くんのそんな本気の言葉も忘れ去ったかのように、また満面の笑顔で指輪を見て、「きれーい!」。 …予告に映った紫乃ちゃんの晴れやかな表情はこれだったのですが、まさかここまで純粋にモノをもらった喜びだとまでは、思いませんでした! やられましたー! (いえ、一馬くんに告白されてそんなうれしそうになるなんて、おかしいおかしいとは思ってはいたのですが【笑】!) 場面は転じて、建物の中の広場のようなところで、ダーツの的の中心を当てる桃姐。 「よっしゃーっ!」の声が響いて、テーブルについている男女びっくり! 続いて、仏壇に手を合わせている藍ちゃん。 「お父さん」に、これからのことをお祈りするのかと思ったら…「二日酔いって、ほんとにつらいよねー」。最高! そこにノックの音。「はーい」と出て行く藍ちゃん。 ドアを開けると、朱々。 でも、ドアを開けたのはさっきの藍ちゃんではなく、師匠ちゃん。 朱々が師匠ちゃんハウスを訪ねてきた場面でした。 場面は再び、高倉姉妹ルーム。 「実は、相談したいことがあって」と訪ねてきたのは、瑠璃ちゃん。 「相談?」 師匠ちゃんハウスでは、師匠ちゃんが相談を受けてます。 瑠璃ちゃん「お姉さん、いますか」。 藍ちゃん「いまは、ちょっと…あたしじゃだめ?」 この藍ちゃんの言葉に、言葉をつまらせ、困ったな、という瑠璃ちゃんの表情、お見事! 藍ちゃんの「今日はよっぱらいじゃないから。」という言葉にも、瑠璃ちゃん、ちょっと上目遣いで、困った表情。 一方師匠ちゃん「駆け落ち!?」 黙ってこくりとうなずく朱々ちゃん。 ほほほと笑って「こらぁー、どーもどーも」とわけのわからないリアクションで、髪に櫛を入れたりしてる師匠ちゃん。 「驚いたなぁー」という師匠ちゃんに、朱々ちゃん「でしょー」。ようやく朱々ちゃんらしい、末っ子っぽい声だったのですが。 師匠ちゃん、座布団の上に正座して「いいのかい、こんなおじいちゃんで」。朱々ちゃんがっくり。ウンザリした顔で師匠ちゃんをみると、メガネにハートマークが灯ってます(この表現はスゴイです!) 朱々ちゃん「紫乃ちゃんの話!」 ベンチに座って、指輪を眺めて、ため息をついたりしてる紫乃ちゃん。 女心って、まったくわかりません(笑)。 師匠ちゃん「なるほど。そういうことだったのか」。あの驚愕の状況を「なるほど」と受け入れられるあたり、師匠ちゃん、さすが“師匠”です! 朱々ちゃん「もう、みんなばらばらで。どうしたらいいのか」 師匠ちゃん「ギャンブラーは、いずれ、必ず、孤独になる」 朱々ちゃん「朱々は孤独になんかなりたくない! みんなだってきっと、そう思ってるよ!」 師匠ちゃん「困ったときは、ギャンブルにきけ!」 考え込む朱々。 そしてダーツの練習をしている桃ちゃんの目にとまったのは、もうすぐ小学校にあがるぐらいの女の子と、お母さんの二人連れ。 「入学式のお洋服、どうしよっかー。買いにいこっか。」というお母さん、「買いに行くー?」という女の子。しあわせそうな親子に背を向けて桃ちゃんが投げた矢は、的の中心を大きく外れる。 目をふせる桃。 「実は私、中学を出たら、本格的に上京して、一人で母を探そうと思うんです」と瑠璃ちゃん。 「どういうこと?」と問う藍ちゃんに、「私達の両親離婚してて、私は母の顔を知らないんです。兄は、もう二度と会いたくないって言うんですけど、あたしはそうは思わなくって」と、意外な事実を告げる瑠璃ちゃん。一馬くんのあの屈託のなさそうな笑顔の裏に、複雑な家の事情や、お母さんに二度と会いたくないと言い切る頑なな一面があったというのは、あの大告白より驚きかもしれません。「そうだったの」という藍ちゃんの返事にも、きっとそういう思い、こめられていると思います。 「母も、きっと私や兄に会いたいと思うんです。だって、あたしがこんなに会いたい、って思ってるんだから」という瑠璃ちゃんの表情、そこから「すいません、あたし他に相談する人いなくて」とうつむくしぐさ、一馬くんのことも語ってくれるシーンがこんなに見事なんて、うれしくなるぐらいです。 それにこたえての藍ちゃんの「会いたいよね、お母さんに。会っていろいろ話したり、料理教えてもらったり、ききたいこともいっぱいいっぱいあるよね。」という言葉への瑠璃ちゃんの「だけど、お母さんはもうあたしのこと…忘れちゃってるのかな」、藍ちゃんの「そんなことないよ!」への「親も兄弟も…人間は所詮ひとりぼっちだから」、どちらも瑠璃ちゃんの孤独だけでなく、一馬くんの孤独まで浮き彫りにするような、表現力にみちみちたシーン。貴重です! 藍ちゃんの「そんなことないよ、絶対に!」。その言葉通り、一馬くんも救ってくれることを、『賭事女王』に期待して、いいのでしょうか。 赤い窓にゼロの紋章。 ダーツの矢をにぎりしめ、放つ茜。 カジノ・ねずみ(仮称【笑】。ほんとうは“ゼロ・ワールド”という名前があるようです)のドアを一人開け放つ朱々。 誰もいないフロアへと足を踏み入れると、“困ったときは、ギャンブルにきけ!”という師匠ちゃんの声がよみがえります。 目を閉じると、思い出されるのは、SMポーカー勝負。 朱々『女王様でいられなくなっても、知らないよ』 JOKER『コールなの、レイズなの』 朱々『レイズに決まってんでしょ、勝つのは朱々なんだから』 JOKER『だったら早くチップを』 朱々『お黙り!』 「『お黙り!』ってやつ?」 と言いながら現れたのは「桃ちゃん!」 「SMポーカーのときの朱々、かっこよかったよね」。という桃ちゃんに、朱々ちゃん「カッコよかったのは、桃ちゃんのビリヤードでしょ」。 桃姐『その勝負、あたしが受けた』 ジョージ『お前もこりない女だな』 桃姐『あたしがこのキューで、あんたのタマ串刺しにしてやるよ』 「『このキューで、あんたのタマ串刺しにしてやるよ』ってやつ?」 と、現れたのは「藍ちゃん!」 「勝負しよう。あたし達が勝てば、お母さんもきっと帰ってきてくれる!」という藍ちゃんに、朱々ちゃん「でも、ほんとに勝てるのかなあ」、桃姐「勝てるのかなあ、じゃなくて、絶対に勝つんだよ!」 そこに「あんた達なら、できるかもね」。「サミーさん!」 「確かに茜は天才ギャンブラーだけど。ここまで来たんだもの、とことんやってみればいいじゃない?」 サミーさんの言葉に、桃姐「そうだよね! もうやるっきゃないよね!」。サミーさん「そう」。 そこに現れたのは紫乃。 桃ちゃん「紫乃ちゃん!」、藍ちゃん「やっぱり来てくれたんだね!」、朱々ちゃん「四人揃えば、こわいものなしだね!」と迎える妹達の間を割って通り過ぎ、三人に背を向けたまま紫乃ちゃん「やっぱりあんた達、ギャンブルを選ぶんだ」。 「後悔するよ」という紫乃ちゃんに、「何もしないで後悔するより、勝負して後悔したほうがいいじゃん!」と桃ちゃん。「紫乃ちゃんも一緒にやろうよ。四人一緒に」という朱々ちゃんに、紫乃ちゃんは。 「あたしは、やらない」 紫乃ちゃんをみつめる三姉妹、そしてサミーさん。 藍ちゃん「これまで力を合わせてがんばってきたじゃない」、朱々ちゃん「朱々達を見捨てるの」。 「じゃあ、最後に一度だけ、勝負してあげる」と紫乃ちゃん。「よかった」ともらした桃ちゃんに告げられた、紫乃ちゃんの言葉は。 「あんた達とね」。 「あたし達と?」という桃ちゃんに、「あたしは、ギャンブルから逃げるんじゃない。ギャンブルを捨てるの」と紫乃ちゃん。「勝負に勝って、そのことを証明するわ」。 そして、黄色いアフロのかつらまでつけ、ラテンな衣装を身につけたサミーさんの宣告。 「これより、ダンス・ダンス・レボリューション対決を行います!」 紫乃ちゃん「いい。勝負は一回だけよ。負けても後からぐずぐず言わないでよね」。 桃ちゃん「わかった」。紫乃ちゃん「誰が相手」。全員が「私が」。その中で朱々ちゃんがあらためて「朱々がやる」。 桃ちゃん「頼むよ、朱々」。藍ちゃん「絶対勝ってね」。うなずく朱々ちゃん。 紫乃ちゃん「あたしが勝ったら、駆け落ちする。」 朱々ちゃん「朱々が勝ったら、これからも四人一緒に戦っていく。」 うなずく藍ちゃんと桃ちゃん。 何も知らないサミーさん「美しいじゃない。女同士の、愛と意地を賭けた戦いね!」。悲しいです! この勝負の、ダンス・ダンス・レボリューションの音楽、靴がフロアを踏み鳴らす規則正しいリズムは、忘れ難いものとなるでしょう。 ビートのきいた音楽が、必死で悲壮な感じにあっていて、ちょっと悲しくて、この場面の感情を高めるのに最高の効果。 銃で何かを射抜くような最後のポーズ、そしてゲーム画面の鉄の扉が閉ざされる映像が、何かがとり返しがつかないほど終わってしまった、という印象。 紫乃ちゃんのきつい表情、朱々ちゃんの目を伏せた表情。 そして判定は。 「勝者。高倉紫乃!」 「じゃ、好きにさせてもらうから」と、きびすを返す紫乃ちゃん。 その紫乃ちゃんに朱々ちゃん「紫乃ちゃん、これ!」 プレゼントを差し出して「遅くなっちゃったけど…朱々達、三人から」。 紫乃ちゃん、硬い表情を崩さずドライに「ありがと」。 行ってしまった紫乃ちゃんを、茫然と見送る高倉姉妹。 「いいないいなー! ところで紫乃ちゃん、誰と駆け落ちするの?」 サミーさんのその問いに、答えられない高倉姉妹。(それはそうです!) 海の向こう岸、埠頭の建物の明かりを背景に、硬い表情でうつむき、重い足取りで歩いてくる紫乃ちゃん。 顔をあげると、エンジンをかけ、ヘッドライトをつけた車にもたれかかるシルエットが、紫乃ちゃんに気づきます。 ヘッドライトの前に回ると、その人影の、微かな笑顔が見えるように。「一馬。」 一馬くんの複雑な、それでもほっとする笑顔は、きっと紫乃ちゃんに、何かをあげたのでしょう。 「紫乃ちゃーん!」と追ってくる高倉姉妹。硬い表情で背を向けていた妹達に、振り返った紫乃ちゃんの表情は、輝くような笑顔でした。「じゃあね!」 「一馬くーん! 一馬くーん!」と追いすがってきたのはサミーさん。泣きながら「わたし、わたし何も聞いてないわよ一馬くん」とすがるサミーさんを「ごめんサミーさん」と振り払った一馬くん、いつもサミーさんに抵抗できなかった一馬くんとは別人のよう。 その一馬くんの「ごめんサミーさん」という低い一言は、車の中での紫乃ちゃんのつぶやき「つらいわね、駆け落ちって」と響きあって、これまでの『賭事女王』とは違う、このシーンの基調になっていました。BGMはチェロのメロディー。哀愁も感じられる、でも、夜明けの旅立ちのような雰囲気もある、長調。 車のドアにすがって「かーずーまーくーん!」と泣き崩れるサミーさんを振り払って、車は走り去ります。走って追いかける高倉姉妹とサミーさん。サミーさんは、最後まで、転ぶまで車を追いかけます。 黙って涙を流す紫乃ちゃん。 いつまでも車が去った方向を見つめている高倉姉妹。 to be continued. |