賭事女王

GAMBLE QUEEN

Episode 4(後半)
(1999年11月1日放映)


■ 脚本 ■ 羽原大介
■ 演出 ■ 関卓也
■ 出演 ■
高倉紫乃:園原佑紀乃  高倉藍:木内晶子  高倉桃:内藤陽子  高倉朱々:一戸奈未
一馬:天野浩成  サミー:稲宮誠  高倉賢:石丸謙二郎
雀鬼ファウスト:萩原流行  雀:岡元あつこ  樋田雅博



 雀卓から離れた席では、緊張感ゼロで寝ほうけてる朱々ちゃんを起こそうと必死な藍ちゃん(まじめです!)
 その藍ちゃんに朱々ちゃん「大丈夫、お守りあるから。よく言うでしょ、信じる者は牌をつかむ、って」(…愛野美奈子か!?)
 藍ちゃん「それを言うなら!」
 朱々ちゃん「あー、眠い」
 …天野さん一馬くんも、こっちのチームにいたら平穏かなー、とも思いますが、まあそれは実際に接触シーンがないとわかりません、彼女達も高倉姉妹ですから…


 雀卓では雀さんがイライラ。「まだ?」
 紫乃ちゃん「あー、すいませーん、初心者なものでー」。…このセリフ、紫乃ちゃん突然おばさんモードに突入! なんで!?というぐらい…
 桃姐の『いいぞ、紫乃ちゃん!』という心の声援を受けながらのろのろ打つ紫乃ちゃんに雀さんが「ねえ、朝になっちゃうでしょ!」といえば「えー、時間制限ってありましたっけ?」。
 サミーさん、好みの男の味方とくれば、にこっと笑って首を横に振り「ないわよ」。
 さんざん迷って「お待たせしました。はい、次桃ちゃんの番」というわざとらしーい紫乃ちゃんの手は「なーんでそれで悩むのよー!」(ばい 雀さん。このセリフ、ちょっとかわいかったです!)という手。
続く桃ちゃんも「ねえ、まずツモってから考えてくれる?」という雀さんに「うるさいなー、鳴くか鳴かないか考えてんの。あっ、なんだやーだー、あたしペイなんか持ってないじゃん。ごめんなさい、おばさん!」
 雀さん「おば…っ!」(“色気ババァ”よりきいたようです!)

 素直な天野さん一馬くん、この展開に満面の笑み!
 「面白くなってきたじゃない?」と背中を叩くサミーさんに、「ひょうたんから駒だよ。完全にこっちのペースだぞ」と、朱々ちゃんとは違ってコトワザも正しくよろこんでます!

 「ちょっと、あんたの番よ。それとも鳴くの?」といらいらする雀さんの目の前で紫乃ちゃん「ちょっとまってくださいねー。あ、それだー、おじさんの捨て牌」。
 「ちょっとぉ!」と怒る雀さんに目もくれず「ろん。たんやお。いーぺいこーどらどら」
 天野さん一馬くん、両手でのちっちゃながっつぽーずで「よーし! いいぞー!」
 続く南二局、桃姐も「ロン!」(目を剥く雀さんの表情が秀逸!)。
 やぁったー! とはしゃぐ高倉姉妹、さっきの大喧嘩はどうした状態。


 藍ちゃんにもたれきって寝ほうけてる朱々ちゃんを困った顔で見ながら、そっとてのひらを広げる藍ちゃんの手には、美しい孔雀の絵柄の、一索の牌。


 紫乃ちゃん『この親で連チャン(連荘?←パソの辞書が勝手に変換…)よ。できるだけ点棒を稼いで、桃につなげればなんとかなる!』
 桃姐『ここでめいっぱい紫乃ちゃんに頑張ってもらって、最後の親で絶対さからってやる!』
 雀さん『遊びはここまでよ。昨日今日麻雀を覚えた小娘に、あたしが絶対負けるわけがない』
 そして葉巻に火をつけながらファウストさん『差はまだ3万点以上。さあ、次はどんな手で来るんです』。


 で、雀さんにいい手が来て『来た、スーアンコー! ダマで3万2千点、直撃よ!』と張り切る雀さんの目の前で紫乃ちゃん「ロン。ピンフ、1500点」と安上がり!
 その後も安上がりを続ける紫乃ちゃんに、天野さん一馬くん、ほんとうにうれしそうに「いいぞー。安手ばっかりだけど、連チャンで完全に流れがこっちに来てる!」。
 サミーさんはちょっとクールに「どこまで連チャンできるかが勝負よね」。
 でも、天野さん一馬くんの笑顔は消えません!
 そう言った途端にファウストさんが「ツモ。タンピン三色、ドラドラ、ハネマン」と上がり。
 「いよいよオーラスね」というサミーさんの隣の、天野さん一馬くんの緊張した表情もいいです。

 緊張した面持ちでの「紫乃みたいに連チャンで逆転を狙うか、いや、桃の性格なら一発逆転を狙うんだろうな」という天野さん一馬くんの言葉、高倉姉妹との長いつきあい(苦難の歴史?)を感じさせる、あったかいせりふ。
 天野さん一馬くんの肩をすりすりと撫で回しながら「てことは」
 天野さん一馬くん「役満しかない!」。いつのまにかサミーさんとの息もぴったり(笑)。


 そしてオーラス。
 天野さん一馬くんの思った通り、桃姐は『ここまで来たら、一発逆転しかない!』
 紫乃ちゃん『まかせたわよ、桃!』
 ファウストさん『一発逆転狙いで来ますか。でも、その前に1000点でもこちらが上がれば、こちらの勝ちですよ』
 雀さん『アシストに徹して、絶対に上がらせない!』


 その頃藍ちゃんは「朱々! ねえ、起きてよ! いよいよ、最後の、最後の勝負よ! 朱々ー!」
 でも寝ほうけてる朱々ちゃん…


 桃姐が中(チュン)3枚で「ポン」。さすがの桃姐も、ちょっと弱めの声。
 これには天野さん一馬くん「あれ」。卓をみつめる真剣表情が、ものすごくきれいです!
 サミーさん「安手の連チャン狙いにきたようね。そのほうが利口よ。リスクは少ないし、上がりやすい」
 でも表情を動かさない天野さん一馬くん。


 さらに桃姐、發(ハツ)3枚で「ポン」。
 サミーさん「あら」
 天野さん一馬くん「まさか、桃」
 ここで第3話冒頭の師匠ちゃんの役名解説がきいてきます。赤い唇の中、緑の黒髪の發とくれば、思い浮かぶ手は…
 『大三元ときましたか』とファウストさん。『冗談じゃないわ。死んでも上がらせるもんですか』と雀さん。
 そしてファウストさんは『テンパイ。さあ、勝負はここからです!』


 そして桃姐の手許に、大三元の最後の一要素、白い肌の象徴、白(ハク)の三枚目が。
 思わず乗り出したサミーさん「おやおや」。
 天野さん一馬くん「勝負だ。上がれば逆転できる!」
 その気配を察した雀さん『テンパってるの。それならゲンブツしか切れない』と路線変更。
 桃姐、紫乃ちゃんに目線をやって『お願い、紫乃ちゃん。もう一枚鳴かせて』
 前半では全く通じなかった桃姐の祈りは通じ、紫乃ちゃんの捨てたおダンゴ牌の1を取り「チー」、中・發の向こう側におダンゴの1、2、3!
 「マジでテンパっちゃったよ。大三元、タンキ待ちだ」という天野さん一馬くんのすっかり夢中になった表情がまたいいんです!


 そしてこの勝負のクライマックスはここに。
 桃姐『どっちで待つ? どっちなら通るの?』と、北を捨てるか南を捨てるかで迷う桃ちゃん。『勝負に勝つには、牌の声を聞け!』という師匠の言葉は甦るものの、『ねー、おっさん。牌の声なんて聞こえないよ。どーすりゃいいんだよー』と、北に手をかける。
 『それだっ! もらった!』と目を光らせるファウストさんの眼前に、桃姐が北を投げつけるように出そうとしたその瞬間。
 「危ない!」
 振り返る桃姐達、声の主は藍ちゃん!
 藍ちゃん「もうー、何やってんのよ、朱々ー!」朱々ちゃん「壁に頭ぶつける夢みちゃったー」藍ちゃん「ぶつけたのー。」
 寝ぼけた朱々ちゃんが倒れ込んで頭をぶつけたから上がった声。でも、その声に桃姐は、北から手を離し、南を捨てる。いまいましげに頬を歪めるファウストさん。
 「イェーイ…」と首を横に振るサミーさんの隣で、天野さん一馬くん、卓をじっとみつめたまま身動きもせず。


 それから淡々と勝負は続き、ファウストさんが三萬を捨てる。
 と、天野さん一馬くん「あ、いかさま」。夢中になっちゃってる、という風情の無防備な声ですが、この回ここまでこの系統の声が聞けてしまうと、どうしちゃったの? という思ってしまうほど。
 この天野さん一馬くんの指摘には「ニ対二で勝負するときの通しは、イカサマじゃないわ。作戦のうちよ。玄人麻雀の常識」。
 つまりそれだけ、玄人コンビが追いつめられているというわけで、素人相手にファウストさんがそこまですることに、信じられない、と困惑したファウストさんを見る雀さん。
 でも、求めた牌は「ないみたいね」というサミーさんの言葉に、ほっと息をついてひろがる天野さん一馬くんの微かな笑みがまた絶品。
 天野さん一馬くんの表情をこれだけ引き出してくれるこの麻雀勝負、それだけで価千金です!


 そして藍ちゃん。『天国のお母さん。あたし達を、助けて!』
 その藍ちゃんにもたれかかって、眠り続ける、賭事の神様のような朱々ちゃん。


 ここへ来て、桃姐の鉄火肌が生きてきます!
『こうなったら開き直ってやる。牌は生き物。勝負は時の運よ。いいや、捨てちゃえ!』とさっきの北を捨てる!
 そして口をついて出てきたのが「勝ーつと思ーうなー」の歌(似合いすぎ、桃姐!)
 途端「やめなさい!」。ファウストさんの、大きな声!
 桃姐「何が?」ファウストさん沈黙。
 桃姐「おっもっえばーまけーよー」
 ファウストさん「演歌はやめろーっ!」。叫んでます!
 これにはさしもの紫乃ちゃんもびっくり。
 桃姐、あっけに取られた顔からくるりとサミーさんを振り返り「歌っちゃいけないなんてルール、ありましたっけ?」
 サミーさん、もううれしそぉーうに「ないわね」。
 調子づいた桃姐、ふんぞりかえって「かぁーつぅーとぉーおもぉーうなぁーおもえばぁー」
 「やめなさい!」と繰り返すファウストさんの全身が震えてるのを見て紫乃ちゃん、師匠ちゃんのえっちな本を見たときと同じうれしそうな顔で「もしかして、演歌ギライ!」
 ぶるぶる震えてるファウストさん。
 そして桃姐と紫乃ちゃん、立ち上がって「かぁーつぅーとぉーおもぉーうなぁー おっもっえばぁー まっけーよぉー」! 鉄火肌の桃姐もこの歌、似合うんですが、紫乃ちゃんが振りつきで歌うとまた演歌歌手そのもの、ってカンジで、ハマリまくり!


 「やめろぉぉぉぉぉーっ!」という絶叫とともにファウストさんが投げ捨てた牌は、理不尽な戒めから解放される女の姿を、自由への夢を表す牌、美しい孔雀の柄を彫り込まれた、いまも藍ちゃんの手にしっかりと握られている、一索。


 桃姐「ロン!」
 倒した牌は、白三枚+一索。「大三元!」
 紫乃ちゃんの、輝く顔!
 雀さんの、あっけにとられた顔。
 「やぁったー!」と抱き合って喜ぶ紫乃ちゃん桃ちゃん!
 ギャラリー席では、藍ちゃんと朱々ちゃんが手を取り合って「やったー!」
 喜びの笑顔で高倉姉妹に駆け寄ろうとする一馬くん、が、一馬くんの上着が乱れるほどの勢いでその腕を掴み、壁に両手をあげた状態でぴったりと押しつけてしまうサミーさん!
 「久しぶりに身体が熱くなるような勝負、見せてもらったわ!」その熱くなった身体を押しつけられて、天野さん一馬くんの表情には、怯えが…


 抱き合って喜ぶ高倉四姉妹、朱々ちゃん「お守り、きいたでしょ?」藍ちゃん「うん!」
 そして真顔に(というより恐い顔に…)なった紫乃ちゃんが「さあ、聞かせてもらいましょうか。どうして藍をさらって、あたしたちがこんな勝負をさせられたのか」
 謎が明かされるシリアスな場面、なんですが、紫乃ちゃんの背後に、抵抗する力も尽きた天野さん一馬くんがサミーさんに、胸から腰にかけてのあたりをどうこうされてるところがちらちら映ってるんですが…

 藍ちゃん「このひと、あたしたちをゼロファミリーにスカウトしようとしてるの」
 桃姐「ゼロファミリー?」
 朱々ちゃん「何それ?」
 ファウストさん「世界を賭け、そして動かしているギャンブルの殿堂です。そこには、あらゆるジャンルの、一流のギャンブラーが集められています」
 そして高倉姉妹をそこに引き入れようとした理由を問われると「血の宿命」。
 自分達の父親は普通の公務員だ、という高倉姉妹に、父親はそうでも、母親(16年前に死去)は…というファウストさん、“戦い続ければいずれわかるでしょう”と。その戦いは「もちろんギャンブルです。私達ゼロファミリーの人間は、全ての物事の結論をギャンブルによってのみ導きます」。
 勝負は一回勝負の約束だったはず、という姉妹に「私との勝負は、これで終わり。私はこの勝負を境に、ゼロファミリーを引退し、ギャンブル界から消えます」その言葉を耳にしたときの雀さんの表情、ものすごくきれいです!

 あなたたちはゼロファミリーの次の相手と戦うことになる、というファウストさんの言葉に、そんなの聞いてない、そんなことにつきあってたらあたしたちの人生どうなっちゃうの、と言い返す高倉姉妹。
 ファウストさん、笑みを浮かべて「それもギャンブル。」
 そして、予告で映ったときから、ああ、この勝負にファウストさんは敗れて、きっと永久に去ってしまうんだ、という感慨を抱かせた、遠い世界をみつめているような表情とセリフ。
 「人生は、全てギャンブルなのです。」


 きびすを返して立ち去る紫乃ちゃん。
 続く朱々ちゃん、藍ちゃん、そして桃姐。
 『楽しみにしていますよ。あなた達が一流のギャンブラーになるのを。それがあなた達の、血の宿命なのです。』という萩原流行さんファウストさん、『賭事女王』への期待を抱かせるに十分過ぎるぐらい、格好良くて奥行きのある敵でした!

 そして高倉姉妹に見捨てられ、四人について帰ろうとしてもまたサミーさんに壁におしつけられてしまう天野さん一馬くんの運命やいかに…


 どうしてもっとくわしく聞かないで帰ってきちゃったの、という藍ちゃんに、あんな男のいうことより、もっと信用できる人がいるでしょ、と、ぱぱりんに聞くことを主張する紫乃ちゃん。おうち帰って着替えたらすぐぱぱりんのとこに行こ、と、明るい朱々ちゃん。


 その頃、病院のぱぱりんに忍び寄る男。
 脈拍数60を表示する心電図。


 深夜の病院にこっそり忍び込んでくる高倉姉妹、すれ違う白衣の男。
 その男にはっと振り向く藍ちゃんの腕を取って、朱々ちゃん「行こ」。
 階段を降りながら白衣を脱ぐ男。
 紫乃ちゃんの悲鳴。
 呼吸器を外されたお父さん。
 「賢さん! 賢さん!」と桃姐が揺さぶっても、「うそ…」と藍ちゃんがみつめる心電図は、0の数字とともに平らなまま。
 鳴り響く警鐘。
 無情に表示される、心電図のゼロの数字…


 to be continued.


 色彩的で印象的な大三元という手、物語にぴたりと寄り添った孔雀の牌、という美しいモチーフを駆使した第3話+第4話、あまりにもあざやかでした!
 “ずるいじゃないか、自分だけの世界に行くなんて”というはるかのセリフのリフレインでどこまでも端整な悲劇を綴った、榎戸作品の傑作・セラムンS110話『ウラヌス達の死? タリスマン出現』を思い出してしまったほど! レポ書いていて、その見事さに、加速度的に興奮してきてしまいました!
 構成が端整でも、登場人物の人間っぽさ、ちょっとしたしぐさの日常的な“らしさ”が失われない温度感もよかったです。
 もう、こんなに長いレポはしません。天野さん一馬くんレポという目的を忘れかけてましたね、今回(笑)。
 もちろん、天野さん一馬くん、この最高の脚本の中で、最高の表情をみせてくれてました!(あのやわらかいやさしい声が、あんなにきけるなんて!)

 観られない皆様、絶対大損失。『賭事女王』公式サイトに、ビデオ化の御要望を、ぜひ!(DVDとか欲しいかも!)