dance no dance


天野さん御共演者様: 中澤聖子さん
(セーラームーンミュージカル『かぐや島伝説』『同改訂版』)

 2003年11月22日(土)に観て来ました、『かぐや島伝説』で天野さんと御共演の中澤聖子さん御出演のダンス公演『dance no dance』(【時々自動】【時々自動:dance no dance】御参照)、とても刺激的で面白い公演でした(ジャンルでいうと…コンテンポラリーダンス、ということになるのでしょうか。)

 会場は、“旧港区立三河台中学校体育館”。俳優座劇場のすぐ裏手にある、周辺の就学人口の減少に伴って廃校になった三河台中学校(学校施設全体は現在“みなとNPOハウス”として、港区が区内で活動するNPO団体に活動場所として提供しています。【NPO-TV(みなとNPOハウス)】御参照)の体育館で、ほんとうにまんま“学校の体育館”というところ。
 その床に、ステージと接する大きな四角を赤のビニールテープで区切った空間+ステージが“舞台”で、観客は赤テープの外側から、基本的にスタンディングで、でも座るのも(床に座っても、体育館の中にある椅子を出して座っても、高いところにある客席に座っても)自由、ダンスが演じられるときに歩き回るのも自由(入場時に、各ダンスの“Best View”なエリアが記載された分秒刻みの演目スケジュール表が渡され、それを参考に、よく観たいダンスの“Best View Area”に移動することが推奨されていたり)、という、観客との関係も動的なスタイル。
 でも何より、普通のダンス等公演と違う雰囲気を感じたのは、“舞台”である体育館の床に、“出演者”である子供達(10人ぐらいの子供達が出演、ダンスのほか、短い日記のような詩のような言葉を担当する子も)が、チョークで落書きをしたりして遊んでいたこと。
 10月24日の深夜にやっていた『News 23』で『ゴドーを待ちながら』静岡公演(この『dance no dance』構成・演出・出演の朝比奈尚行さんも御出演)を取り上げた特集で、串田和美さんが、いつもは青果市場である場所で公演をする面白さについて語っていらっしゃいましたが(このゲストブックの 03/10/26 01:16:08 の守峰書き込み)、そこで語られていた“演劇空間ってなんだろう”という問いをもって、その青果市場にあった“懐かしさ”のようなものを生み出そうとしたものなのかな、などと考えたりも。

 で、公演は、体育館の床の“舞台”の中央で、学校で各自の席としてよく使われる木と金属パイプの椅子に座った女性が、ボディスラッピングをしたり、椅子ごとジャンプしたり…というダンスに始まり、ソロだったり二人組みだったり集団だったりの、使う空間も始まり終わる時間もばらばらの、数十秒〜数分のダンスパフォーマンス(日常の動作や、身体の面白い動き、といった、動きそのものを拡大していったような)が、かなり複雑に組み合わさって約1時間の公演になっている、というもの。

 それぞれのダンスの組み合わされ方は、一応タイムテーブルが組まれているのですが、完全にぴったりではもちろんなく。
 そもそもダンスの中には、目隠しをして隊列を組んだ集団あるいは目隠しをした個人が、“舞台”を歩いたり走ったりして前進し、舞台の端に近づくとその動きを見ている別の人がホイッスルを短く吹き鳴らし、そのホイッスルで向きを変え、また舞台の中を前進する…という、かなり偶然性をダンスの空間と時間に導き入れるものもあったり。
 このホイッスルの響きが、“体育館”という空間にマッチして、なんともいえない感覚を呼び覚ますという効果も。

 体育館のステージの奥にはスクリーンがあって、そこにはずっと開演からの時間が秒刻みで表示されているとともに、次々に舞台に登場しては演じて退場していくダンサーさんのお名前を、登場のときに表示も。聖子さんのお名前がそこに表示されると、背筋の伸びる思いがする、その緊張感も心地よかったです。
 …かと思うと、ステージが“舞台”として使われ、そこで歌(朝比奈さん作詞の、不思議な歌!)に合わせたダンスが踊られる時間帯も。
 時刻表示がされているステージ奥のスクリーンも、身体の動きを面白く構成した映像が映し出される時間帯があり、その映像も“ダンス”。

 聖子さんですが、1時間の間に現れては去る50数編のダンスの幾つもで、とても印象的な動きと表情を、またまた見せてくれました!
 “サソリの兄弟”“ギリギリの女”“棒ダンス・男子”“やっぱりギリギリの女”…等々、タイトルだけでも不思議なナンバーで聖子さんはソロ、あるいは小グループで、本当に面白い身体の動き、表情。
 変わっていたのは、聖子さんの両手両足の先に紐→棒が取り付けられ、棒の反対側の端をそれぞれ1人ずつ計4人の男性が持ち、棒を持ってさまざまに位置を変えたり交差したりの動きを繰り返す、というもの。
 聖子さんの身体は、人形を通り越して布袋か何かのように変形しひきずられひっくり返され…と、人間のあるべき身体のかたちってどんなだっけ、ということまで揺さぶられるような、ある意味ショッキングなダンス。
 『洞海湾』では袋詰めの女・SW役を演じられた聖子さんの、さらなる進化形態?
 ステージの上のダンスでも、その長身と、ジャズダンス等で鍛えられた美しい動きで、ひときわ光ってました。

 自由な感じで、偶然性も取り入れられていて、一見ばらばらなダンスの集まりが、ある瞬間全体として、ものすごく精巧な機械のように見えたり、そう思って見ているとやっぱり人間の身体の動きの面白さに、機械っぽさの感覚が雲散霧消したり…と、観ているほうの感覚も“ダンス”するように揺れ動く、面白くて、不思議で、新しい感じだけれどどこか懐かしい、いろんなものいっぱいのダンス公演でした。
 それが、あんな俳優座劇場のすぐ裏にある学校の体育館で…。六本木の街の見え方まで、変わってきそうです!

(ゲストブック書き込み:2003年11月27日)


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