ウルトラマンガイア  第29話
遠い街・ウクバール


天野さん御共演者様:松田 優さん
(『修羅がゆく 10』)

 『本気!』シリーズで北脇役として御共演の賀川黒之助さんが御活躍の第32話『いつか見た未来』を観るために借りた『ウルトラマンガイア』第8巻の最初に収録されていて、賀川さん御出演作品ではないのにゲストブックに感想を書かずにいられなかったのが、この第29話『遠い街・ウクバール』。

 宇宙のどこかにある<ウクバール>、いつも風が吹いていて、空中に浮かぶたくさんの塔の頂では黄色い風車が回り、夕方5時になるとサイレンが鳴って大人も子供も家に帰る街・ウクバールから自分は来たのだと信じて、配送の仕事をしながら25年間もウクバールに帰る道を探しているおじさんの物語なのですが、柱に背比べの傷のついた廃屋や、黄昏のような光の具合や、せりふの入らないゆっくりとした映像や、ウクバールのことを語るおじさん(Cast:不破万作さん)の語り口や表情が、そして語り部となるXIG隊員(吉田悟リーダー、Cast:松田優さん)のナレーションがたまらなく郷愁をかきたてる、静かな、でもその静けさが強烈な印象を残す作品。

 ウルトラマンガイアは一応現れるのですが(それがないと『ウルトラマンガイア』としてはルール違反)、我夢隊員からの変身シーンもなく、光がさすように不意に、夢のように現れて、そして結局何もせず、ウクバールとその使者である怪獣“ルクー”を見送るのみ。“ウルトラマン”自体がもう、郷愁を呼び起こす装置として機能する今、ウルトラマン込みでまるごと、純文学、と断定したくなるほどのリリカルさでした。

 この作品をしみいるように心地よいものにしているのが、人に注がれる目の温かさ。
 “宇宙の人”などと言われてばかにされながらも、邪気のない表情でウクバールを語るおじさんも、俳優の卵としてなかなかチャンスに恵まれず、生活のために働きだした運送会社でおじさんに出会い、ウクバールの話にうんざりしながらも“おっさん、現実と向かいあわなきゃだめだよー!”とおじさんを心配して奔走する、吉田リーダーの幼なじみ・庄司さん(Cast:寺島進さん)も、“幼なじみの頼みだからなあ”と、おじさんが地球人だと証明しようとこれまた一生懸命になってしまう吉田リーダーも、なんとも人のよい、それぞれに大変な生活によるすさみを全く感じさせない愛すべき人達として描かれていて、幻想的なテーマの物語を、血の通ったものにしてくれているような気がします。
 庄司さんと吉田リーダーが赤ちょうちんで飲んで酔っぱらいやってるシーン、ほんとうに酔っぱらいシーンの古典的な基本という感じなのですが(ポストにぶつかって「赤い顔しやがってぇ」とくだ巻いたり【笑】)、なんともよかったです。
 こういう作品も、連続もののなかにすっと作りこんでしまうあたり、『ウルトラマン』の奥深さを感じました。

 天野さんつながりから、またいいものをみさせてもらった! と、うれしくなりました!
(※この感想を書いた当時は、松田優さんと天野さんが『修羅がゆく 10』で共演されていることを知りませんでした。御縁です!)


(ゲストブック書き込み:2000年10月23日)



牧歌的天野浩成さん情報ゲストブック
この書き込みを含む過去帳1351-1400
■   天野さん共演者様作品見聞録   ■