待つ・2001


天野さん御共演者様: 中澤聖子さん
(セーラームーンミュージカル『かぐや島伝説』『同改訂版』)

 『かぐや島伝説』冥王せつな/セーラープルート役の中澤聖子さんの舞台を観てまいりました。
 作/ニナガワカンパニーダッシュ、演出・構成/蜷川幸雄氏の『2001・待つ』(ベニサン・ピット、10月8日−15日。【tokyo.Walkerplus.com Stage Now:2001・待つ】御参照)の19:00の回です。

 ベニサン・ピットは、たくさんの稽古場が集まっているスタジオの劇場(【Theater Guide:ベニサン・ピット】御参照)。座席数176の小さな劇場で、舞台の高さが30cmぐらいしかないため、最前列に座ると(発売日に40分間電話をかけ続けた甲斐あってこの回の1ケタの整理番号をGETできたため、最前列中央[中央通路の下手隣]という絶好の席に座れました!)ほんとうに目の前で演じられているという感じ、大迫力でした!(しかも、舞台との間の、人一人やっと通れるぐらいの通路も、劇中登場人物が何度も通っていくという!)

 『2001・待つ』は、“こなごなにくだけた鏡に物語をうつすと、小さな物語になる。それをやっとのことで貼り合わせて一枚の鏡にしたのがこの舞台です。(蜷川幸雄氏による公演リーフレット“COMMENTS”)”という言葉通り、大勢でのOPENINGとENDINGにはさまれた7つの小さな劇が組み合わされた構成。
 中澤聖子さんは、そのうちOPENING と ENDING、そして7つの作品のうちの最初の作品に御登場。

 OPENING、ブリキのゴミ缶に向けて水が流れ出しているたくさんの蛇口が設置された舞台のひとつひとつの蛇口に、ひとつにひとり、人物がゆっくりと歩いてたどりつき寄り添う、そのひとりとして聖子さんは御登場。サンダルを手にはだしで、放心したような表情で足を、身体をひきずるように歩み、水音に耳を傾けるような、髪をぬらそうとしているようなポーズで静止する聖子さん、それだけでひとつの物語を感じられるようでした!
 そうして蛇口の傍らで静止した人々の間を縫うように走り回る人物、車のついた台の上でポーズを取り運ばれる群像などといったシーンを経て。

 第一の作品は、村上春樹「かえるくん、東京を救う」(『神の子どもたちはみな踊る』新潮社)をもとにした作品。
 登場人物が早口に語る文体は確かに村上春樹作品の文体で、なるほどなあという感じなのですが、強烈なのが“かえるくん”がほんとうに演じられてしまうこと! たぶん裸に緑と白の絵の具を直接ペイントしたのでは…と思われ(うまく濡れないであろうおへそと乳首のところには白いガムテープがはってあったという…)、かえるくんが倒れると舞台には緑と白の絵の具の跡がつくという生々しさ!

 この不条理さあふれる舞台での聖子さんの役どころは看護婦。物語の主流である主人公(新宿の信用金庫の職員)とかえるくんの世界の“外”の存在で、“まともな”“普通の”人、なのですが、『2001・待つ』全体の登場人物があらかた主人公とかえるくんの側にいっちゃってる感じなので、聖子さんの演じる役割が一種“特異点”に感じられるところがまたうれしくもあり。聖子さんの演技も、そういう深読みをさせてくれるような、個性のある感じで!
(そしてもちろん聖子さんの看護婦姿も眼福でありました! 『ほんまもん』の稲田奈緒さん、『はみだし刑事・情熱系』の朝見優香さんと、『かぐや島伝説』メンバーさん、看護婦さんづいてます【笑】)

 この『2001・待つ』、かなり“前衛”的で難解ともいえるのですが、それにしては、客席が笑う笑う! その意図がどこまで深いかは窺い知れないとはいえ、とにかく観ていてシンプルに面白く、楽しいのがまたいいです!
 そんななかで、セラミュでの天野さんを思い出したのが、第6作品。
 リゾート不動産を売る会社のオフィスが舞台で、セールス担当社員はノルマを課されて窮地に陥り、顧客情報管理担当も煮詰まっていて、セールス担当社員の一部は情報を盗み出して売ろうかなんて相談をしていたり、解約を求める客がやってきたり、というような状況のなかで、時折登場人物達が突発的にシェークスピアのセリフを声高に語りだす! この状況と言葉のズレに、客席も、面白いように笑う笑う!(おそらくは客席も、蜷川演出のシェークスピアをばりばり御覧になっている層と思われるため、ウケ具合がまた格別なのでは【笑】!)
 …というなか、『かぐや島伝説[改訂版]』の船上のシーンで、宝探しのことで頭がいっぱいの史奈さんうさぎちゃん達の後に続いて、最後に舞台からはけていくときに、「尼寺に行け、尼寺に」と『ハムレット』のセリフをつぶやく天野さんまもちゃんを思い出しました(笑)。楽しさ倍増!

 そしてOPENINGと同じような動きが、人物に流血の痕をつけてリフレインされ…というENDINGにも、聖子さん。

 最後のカーテンコール、舞台の一番手前に出演者の皆さんが横一列に並んでお辞儀をされるときは、聖子さんがほんとうに目の前で、しあわせでした〜!  ほんとうに面白く、刺激的な舞台を観た、という感じでした!


(ゲストブック書き込み:2001年10月14日)


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