日藝アートプロジェクト[NAP]
KUSHIDA WORKING Vol.1

夏の夜の夢


天野さん御共演者様:清水紘治さん
(『本気!』シリーズ)

 2002年4月6日19:00〜、清水紘治さん御出演の舞台『日藝アートプロジェクト[NAP] KUSHIDA WORKING Vol.1「夏の夜の夢」』(シアターNAP[日本大学芸術学部江古田校舎内・特設劇場])を観て来ました!
 もうほんとうに理屈ぬきで面白く(清水さんにも笑わせていただきました!)、舞台ならではの清水さんの表情、串田和美さんとのナイス・コンビネーション、そして清水さんの素敵さを、たっぷり楽しめた舞台でした!


 【時代不詳。変幻自在の舞台装置と衣装】
 『夏の夜の夢』はシェイクスピアのものですが、演出は時代不詳。大きさと形の違う、ガンメタル色に塗られた6つの扉のついた壁(最初は一枚の壁のように並んでいて、場面によってこれが一部が後退してより開放的な空間をつくったり、横向きになって後ろについているケージの部分をみせたり、と、自在に空間を変化させます!)の手前の舞台には、長方形を組み合わせた、浅く水をたたえた池と、ちょっと離れたところにやや小さな正方形の穴、という抽象的な舞台。
 登場人物の衣装はおおむねだぼだぼした感じの普通の服(ただし、ティターニア[Cast:國井麻理亜さん]やなどは、黒のレースのビキニ下着に黒のブーツと、悩殺的なスタイル!)。
 清水さんはシーシアスとオーベロンの二役で、カーキ色のだぼだぼのスボンに上半身裸、の上に直接、シーシアスのときには燕尾服(で、鼻の下に一本線でヒゲを描いていて、やや“インチキおじさん”的風貌【笑】!)、オーベロンのときはモスグリーンの薄い生地のトレンチコートという、舞台でなければ観られないスタイル! 女性の裸エプロンというのは永遠のロマンですが、男性の裸コートというのもそれに迫るものがあるかも! という雰囲気でした!

 【天野さんまもちゃんとの共通点も!? 清水さんシーシアス】
 劇のはじまりは、予告もなく役者さん達が舞台の脇のほうにいつの間にか入場していて、清水さんシーシアスの手の合図(ちょっとした動き、かっこよかったです!)で壁の奥に入っていき、そして突然真っ暗になってスタート、という、もう最初っから演劇っぽく!
 清水さんシーシアスの最初の動きは、明日婚礼を控えているヒポリタ[Cast:國井麻理亜さん(二役)]といちゃいちゃするしぐさ。…というより、ヒポリタにのしかかって襲い掛かったり! これまで、清水さんというと、偉そうで色恋とは全くカンケイのなさそうな高村教授(『仮面ライダーアギト』)とか、いざというときの迫力はすごいけれど欲はなさそうな平河内組長(『本気!』シリーズ)とか、という役どころの印象が強かったので、はじけてお姉さんをうっほほーいと組み伏せている清水さんを観られただけで、それはもううれしくなっちゃいました(笑)!
 そこにハーミアの結婚を阻止しようという訴えの一団がやってきたときの、清水さんシーシアスが燕尾服の襟を持って、なおしてみせるしぐさ。『かぐや島伝説』の洞窟のシーンで天野さんまもちゃんが「大丈夫だ」を言う前に襟を直したりしていたしぐさを思い出して、楽しくなりました!
 で、ハーミアはライサンダーとは結婚させない、親の決めたディミートリアスと結婚させる、というハーミアのパパからの訴えがシェークスピア原作通り展開されますが、清水さんシーシアス、ヒポリタにおさわりすることに御執心で、聞いちゃあいません(笑)。しかも、ハーミアに「その胸に問いかけ」と言う瞬間にハーミアの胸を下から上にばすん、と持ち上げるようにタッチしていったりと、気持ちがいいぐらいのやりたい放題! いいです!

 【息ぴったり! 清水さんオーベロンと串田さんパック】
 この舞台での一番のみどころは、清水さんオーベロンと串田さんパックの、気心の知れた仲間同士、という感じのにじみ出る名コンビぶりでした!  清水さんオーベロンは、舞台中央の通路後方から医療用の金属の杖をついて登場。中央通路に接したセンター席に座っていたので清水さんオーベロンがすぐそばを通りました!
 それにしても串田さんパック、冒頭は池に植物を植えようとする串田さんパックのしぐさから始まるのですが、その雰囲気は異色。ラクダ的なかたちのグレー系のシャツにグレーのだぶだぶのズボン、肩には斜めによれよれの布かばんをかけて、やや“裸の大将”的ないでたち。娘達に問いかけられての応え方も、なんとなく閉じ閉じな感じで、いたずら者の少年という妖精パックのイメージをひっくり返すような!
 でも、そんな串田さんパックも、清水さんオーベロンとからむときはノリノリ。
 「森から出さない」というセリフを言ったときには、王にふさわしくすごい威厳でこわいぐらいだった清水さんオーベロン、串田さんパックに「お、身軽だねえ」と声をかけた口調は、なんとも庶民的。串田さんパックとじゃれあうところでは、コートの裾をひっかけて、マジ転び?(客席、笑いが出てました【笑】)
 キューピッドが出てくるセリフになると、清水さんオーベロン、串田さんパックをちょっと指して「キューピッド好きだもんなあ」と、なんともフレンドリーに(ここでも笑いが【笑】)。
 そして清水さんオーベロンから串田さんパックに、長く激しいキスまで! 楽しすぎ!!
 そして串田さんパックが去ると、清水さんオーベロン「それにしても白髪がふえた」。大喝采です(笑)!

 【得をしたような気分。“見えない”オーベロン】
 ヘレナはディミートリアスが好きなのに、ディミートリアスはハーミアに夢中で…とモメたりするシーン。
 清水さんオーベロンの「オレの姿は見えないから、立ち聞きしてやろう」というセリフ、本で読めばああそうか、なのですが、実際に舞台化されているときには清水さんオーベロンは見えなくなったりせず、杖をかついで木のモノマネをしているような愉快なポーズで舞台の上に立っていてくださるという、なんとも得をしたような気になるシチュエーション!
 恋人達のすったもんだを見守るしぐさと表情はとってもユーモラスで、その頂点がわあわあ泣いているヘレナにおそるおそるハンカチをたらすシーン。ハンカチの出所など気にせず盛大に鼻をかむヘレナ(Cast:山崎広美さん)と、いい味出してます!

 【いいところいっぱい。清水さん以外のいろいろ】
 清水さんがからまないところも、楽しいところ、魅力的なところいっぱい。
 すごい! と思ったのは、舞台の床にあいている50cm四方ぐらい?の正方形の穴から、突然水が吹き上がって、マスクをかぶったびしょ濡れの串田さんパックが飛び出してきた瞬間! どうやって出てきたのか、いまだにわからないぐらいのびっくり!
 ライサンダーがいなくなってしまって嘆くハーミアのシーンでは、宝生舞さん、いいなあ、としみじみ。ヘレナとの一緒のシーン、二人ともとっても可愛くて、女の子っていいなあと思いました!
 素人芝居の集団も、傑作でした! 『真夏の夜の夢』を本で読んだときには、なんでこのヒトタチが出てくる必要があるのかよくわからないなどと思ったのですが、舞台で上演することを考えれば、お笑いシーンがなくて何が喜劇か、というのは、あまりにもアタリマエ(笑)。何百年たっても笑えるコントシーンを書いちゃったシェイクスピアはエライ!と、そんなコトで感心するな!的な感心をしてしまいました。
 そういうシーンでも、パックが素人芝居の主演男優にロバの頭をかぶせる、というシーンでは、たった今切り落としてきましたという感じの妙にリアルで断面まで生々しいロバの首と、返り血で血まみれ、血に濡れた長刀をもったパック、という、ファンタジー離れした演出がまた刺激的。このロバの首、かぶせられた後もぱかっと口から裂ける様に開いてリアルな口の中や歯並びまで丸見えになったりして、ビミョーに怖いです!

 【秀逸な小道具。とてつもなくかっこいい清水さん。】
 パックがいたずらの首尾を報告するシーンでは、清水さんオーベロンは、上半身裸にバスタオルを首にかけただけの姿で、ひげそり用の泡でいっぱいの器を手に登場。  その格好で、ベンチに少し前屈みに座る、横顔の見える斜め後ろ姿…とてつもなくかっこよかったです。ごつごつした感じの背中の存在感、全身からにじみでる表情、もうたまりません。
 そしてこのシーンでも、清水さんオーベロンと串田さんパックのかけあいは最高!
 パックが細工の相手を間違えたとわかると、清水さんオーベロンは手にしたひげそり用の泡をぺっ、ぺっ、と串田さんパックの顔に投げつけていくのですが、無言でしつこいぐらいにそれをする清水さんオーベロンのその間合いが、なんともおかしく(笑)。この舞台、これに限らず、ほんとうに日常的な道具(というか、お金のかからなそうなモノ[笑]。縁日とかで売ってそうなおもちゃの光線銃やボール紙に書いたマンドリン、その存在自体で笑えました!)を小道具として絶妙に使っていて、秀逸でした。そして、顔に塗られた泡を串田さんパックが洗い流すときにも活躍する、舞台の床の池。
 そして舞台奥で清水さんオーベロンが朗々とせりふを言い上げている間、しょーもない確率計算をして最前列のお客さんに話しかける串田さんパック(笑)。
 「行け! パック! 風より速く…」のセリフとともにバスタオルをぐるぐる振り回す清水さんオーベロン、後ろの大道具の壁にひっかかって、あれ? となっている風情も、楽しかったです(笑)。

 【場をつくっている、影の役者。水】
 恋人達の混乱が最高潮に達するシーンでは、霧のように雨が降っていました。(この劇場、天井の構造が客席からみても剥き出しになっていて、上をよく見ると、十字に走っている梁のところから、細いシャワーノズルをゆっくり動かして雨を降らせているのが見えました。珍しい体験。)
 そして、ハーミアとヘレナが大喧嘩するシーンでは、先ほどから大活躍の四角い池に、ハーミアとヘレナがお互いを突き飛ばしてびしょ濡れになるという、お笑い番組のコント級の体当たりの演技! 大ウケでした! 可愛い女の子達が、水しぶきをあげてつかみあいの大ゲンカをする光景、大迫力で、そしてなぜかからりとさわやか。いいシーンでした!
 このあたりにくると、この舞台、“水”が独特の雰囲気づくり(特にお笑いシーン【笑】)に大貢献しているなあ、と。串田さんパックが穴から飛び出してきたときの笑いも、あの半魚人的なアヤシサをたたえた串田さんが撒き散らす水滴に、やられた!という感じだったかも。もう、水が使われない喜劇なんて笑えない! と思いかけてしまったほど(笑)!
 若者達(特にムスメ達【笑】)がさんざん暴れ回ってびしょ濡れになった舞台を、長柄つきのゴムべらを使って水を穴や池に落としていく(ここでも穴や池、大活躍! この他にも、舞台に散らかった食べ物のゴミを穴に放り込んだり等、オールマイティです!)串田さんパック。が、とにかく水の量が多く、作業はすぐには終わりません。すかさず清水さんオーベロン、パックへの恋人達の後始末を急げ、と言うフリをしてしれっと「急いでくれよ」(笑)。
 頑張っていた串田さんパックですが、間に合わないとギブアップ、スタッフ(の多分学生さん)を呼んで「手伝ってくれよ」(笑)。

 【笑い、のち、感動。清水さんオーベロンの情愛】
 清水さんオーベロンがパックに命じて、ケンカをした腹いせに、ロバの頭をかぶせられた男に夢中になるよう細工した妻・ティターニアを元に戻すシーン。
 「見てみろ。あんなにロバ頭に溺れて、可哀想だ」というセリフ、清水さんの声は、はっとするほど情愛あふれるもの。この場面の進むべき雰囲気を、予告していました。
 舞台上で缶(ビール? 缶チューハイ)のプルタブを開け、つまみを食べながら語らう清水さんオーベロンと串田さんパック。口にものを頬張りながらセリフを言う清水さんというのも、なかなか観られない、貴重シーン。
 そして、眠るティターニアを抱き上げて、一段低い舞台の奥から舞台の上に上がろうとする清水さんオーベロン。黒の下着という姿の美しい女性を抱えて、とてつもなく官能的でかっこいい!…シーンなのですが、舞台の上にあがろうとするも、奥さんが重いのか(笑)なかなかあがれません、というしぐさの清水さんオーベロン。こんなところで、細かく笑いをとってきます(笑)!
 でも、その直後、舞台の上に横たえたティターニアの身体を拭いてあげたりするしぐさは、ほんとうに優しく、愛情にあふれていて。
 そしてティターニアの瞼に解毒の植物を塗りつけるところは、“儀式”と呼びたくなるような厳粛さ。さっきまで思い切り笑っていたことも忘れて、感動モードになってしまいました!
 ティターニアが目覚めるのを待つ間、ティターニアのブーツにかけた手で、ブーツをきゅっ、と握る手の情感、忘れられません!

 【あざやか。でも。】
 清水さんオーベロンとティターニアが扉の向こうに去った直後、さっと開いた扉から登場する、清水さんシーシアス!
 あの衣装ならではの超早替え! と感心したのですが。
 最初のシーシアスにはあった、鼻の下の一本ヒゲは、さすがにありませんでした(笑)。

 【しみじみ。】
 ほんとうに、舞台っていいなあ! と、心の底から感じられる舞台でした!
 清水さんも串田さんも、舞台を完全に自分達の空間にして自在に息づいていて、そして何より、楽しそう! そしてその呼吸、やっぱり、ライブじゃないと伝わらないところが、どうしてもあるんじゃないかなあと。
 そして清水さん、むちゃむちゃ素敵でしたー!
 この舞台、観られて、ほんとうによかったです!

(ゲストブック書き込み:2002年4月7日)




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