千年王国V銃士
ヴァニーナイツ




第11話 フジタ・カズユキ
(1999年7月2日放映)
■ 脚本 ■ 羽原大介
■ 監督 ■ 長江俊和
■ 出演 ■
守野ありす/アリエス・ヴァニー:栗林みえ  浅木あきら/ラハミエル・ヴァニー:益子梨恵
加賀美あいり/ラビエル・ヴァニー:永井流奈  藤田和幸:渡辺慶  藤田愛美:山川恵里佳
レスタトス・ツヴァイ:大川浩樹  カスガ:江口尚  大家三吉:岡山はじめ
井下武志:天野浩成  立浪有子:高橋里香



奇跡をみせてもらった夜。
『千年王国V銃士ヴァニーナイツ』

 99年7月2日26:05〜26:35放映の『千年王国V銃士ヴァニーナイツ』第11話『フジタ・カズユキ』。
 天野さん出るよ、と教えていただいてからずっと楽しみにしていたけれど、ここまで大きく気持ちが動かされるとは、思ってもみませんでした。“よかった”だけでは、言い尽くせないぐらい。
 一生ものの記録かも、なのに、うまくかけなくて、ごめんなさい、です。



東京から遠くでの放映前に、
ごめんなさい。ストーリー

 関東以外の地域は放映の予定が決まっていないらしいですし、ビデオはずいぶん先になりそうなので(予定通りなら、第11話収録の巻は、1999年のクリスマスの頃発売&レンタル開始のようです!)、ネタバレごめんなさいの、ストーリー。  変身するとプロテクター系の戦士になる女の子三人を居候させている、徹夜でギャルゲーやっちゃったりソフビ人形いっぱい持ってたりという、もしかするとセラミュにも来てるかもしれない(笑)失業中の主人公・藤田和幸君のところに、中学・高校時代の親友で、ちゃんと働いてる(千年町不動産株式会社。このおしごと、ストーリーの中で生かされてます)、天野さん演じる井下武志(いのしたたけし)君が訪ねてくることが、物語のはじまり(二人はサッカー部で、和幸君がキャプテン)。
 和幸君が中学三年間片思いして結局告白できなかった初恋の相手・立浪有子さんと、和幸君が“心配で”ついてきた、ヴァニーナイツ三戦士のひとり・ありすと四人でごはんを食べよう、ということになったけれど、その日武志君は仕事で遅れてくることに。
 和幸君が有子さんと二人きりになったところで、有子さんは中学3年間ずっと和幸君が好きだったと告白。そして武志君の“仕事”は敵の罠で、マンションの部屋に案内した女性客に(たぶん首筋か何かを噛まれて血を吸われて)、意思をもたない魔物に変えられてしまう。
 変貌した姿で待ち合わせ場所に現れ、和幸君を殺そうとする武志君を、変身して攻撃するヴァニーナイツ。「武志に手を出すな!」と叫び続ける和幸君の言葉をきくことはできず、武志君だった魔物に必殺技を向ける…

 結末は、あとで。



みたかったフレンドリー。
ほんとうに男の子どうし

 喫茶店での和幸君と武志君の再会シーン、男の子フレンドリーがはじけてます!
 お互いの胸や肩をどついたり、でこぴんしたり。それがいっぱいの笑顔で彩られてる。
 セラミューだとこういう、普通の男の子同士のフレンドリーはなかなか見られないので(はるかはやっぱり、かっこいい女の子だし)、貴重です。
 それに映像だと、アップの天野さんの表情がむちゃむちゃきれいです。ストーリーなしで、それだけ切り取っても感動もの。映像もいいなあ、と、しみじみ思いました。



限りなくクリア。
憧れの三角形

 脚本、結構いいかも!
 と思い出したのは、実は、天野さん御登場じゃないシーンでした。
 『ザ・テレビジョン』(1999 No.26)で「和幸は有子からずっと好きだったと告白される」というあらすじをみたとき、自分の気持ちをはっきり言えないような女の子が、プロポーズしてくれた相手(武志君)が偶然遅れたすきにこっそり想いをもらしてしまう、という、ひそやかなものを想像していたのですが。
 全く違いました。武志はいつ頃来るの、と訪ねた和幸君に、有子姉(どうしても“姉”をつけて“ユウコネエ”と呼びたくなるような感じ!)、どきっぱり「あたしが携帯に電話するまで来ないと思う。」。中学三年間ずっと藤田君が好きだった、武志は全部知ってる、武志にプロポーズされたけど、返事をする前に藤田君にはっきりそのことを言いたかった、だから武志に頼んで探してもらった、と、力のある言葉で告げていく有子姉、威風堂々でした。どこまでも正々堂々な有子姉がカッコイイなら、全部わかっててちゃんと和幸君を探して、その機会をつくった武志君もとっても大きい(しかもその間、仕事で案内をした“お客さん”に、とてもすがすがしい表情で「プロポーズの返事待ちです。」って言ってるんです、武志君)。憧れに値するほどクリアでフェアな関係。感動しました。
 (だからこそ、続く和幸君の行動がまた、光を放ってくるんです!)



どこまでもこのましく。
おしごと中の武志君

 「すいません、お待たせしました」と走ってくるところからはじまる、接客おしごと武志君。
 ボディコン・サングラス・口紅真っ赤のお姉様(悪いひと)を、物件のマンションに案内する一連のシーン、セラミュで見慣れた天野さんの所作(微妙な立ち方とか足さばきとか)、という感じで、なんかうれしかったです。ほんっと好青年。  「プロポーズの返事待ちです」と、すがすがしい表情で言ったものの、返事はいつもらえるの、と問われると「今日のうちに彼女の気持ちは、はっきりすると思うんですけど…」と表情を曇らせて、でもまた笑顔に戻る武志君、この話の冒頭からの眩しいような笑顔の裏にも、いろいろな気持ちが複雑に息づいていることが、ふるえのように伝わってきました(そして、見える表情もその奥の心の動きも、とってもきれい)。



誰かが大事、ということ。
“フジタ・カズユキ”

 サッカー部のキャプテンだった、といった途端、三人娘に「えーっ!」と叫ばれる、さえないおとこのこ、藤田和幸君。  彼のほんとうの価値を描くのがこの第11話『フジタ・カズユキ』だったのだと、思います。
 初恋の人からの告白を受けた和幸君、子供の蹴ったサッカーボールを頭に受けて「いたいよー」と泣き出し、ありすに「もうかえるー」。この明々白々の“譲り”シーンがそれでも成り立つのは、その情けない和幸君の姿が、冒頭から続いてきたさえない和幸君の姿と、しっくりととけあうから(そういう和幸君さえ、かけがえなく感じます)。
 そしてここに、和幸君のセピア色の回想シーンが入るんです。中学生の和幸君。登校途中、おはよう、と声をかけて和幸君を追い越していく友達の心の声が、次々と飛び込んでくる。“サッカー部のキャプテンだからってカッコつけんなよ”“誰もお前のこと、ダチだなんて思ってねーぞ”“マジで有子のこと口説けるとおもってるワケ? バカみたい”。そこに走ってきて、和幸君の肩を抱いた武志君の「何してるんだよ。練習はじめるぞ、キャプテン。」という言葉だけが、陰の声を伴わないで、和幸君の心に飛び込んでくる。「お前だけは違うのか。武志、お前だけは違うんだな!」と武志君に抱きついた、そのときの気持ちが和幸君の武志君への気持ちの核になっていると語る、追憶。
 これは、セーラームーンRの劇場版での、四戦士の回想シーン、なんですね。“またひとりでお勉強よ”とささやかれてさびしかった亜美ちゃん、“またケンカしたんですって”と陰口をたたかれて、人にわかってもらおうなんて思えなくなっていたまこちゃん、セーラーVになってから“このごろつきあいわるいわよね”とうわさされてショックだった美奈子ちゃん、“霊感少女なんて気味わるいわね”と疎外されていたレイちゃんが、それぞれうさぎちゃんの真っ直ぐな気持ちに救われる、だから“その子は…うさぎちゃんはあたしたちの大切な子なの!”になるんだという、あのシーン。武志君は和幸君にとっての、うさぎちゃんだった。だから“大切な子”なんだって、ほんとうによくわかった。
 それだからこそ、の、続く和幸君の行動のひとつひとつのほんとう、だと思います。武志君が魔物に変貌してしまっても(SFXで、ものすごくこわかったです【それだけに、和幸君の真実が際立ちました】! でも、もっとすごいかもなのは、一瞬もとの姿に戻ったときに和幸君に笑いかける、平常時と全く違う、冷たい笑顔。…でもそれも、いつもと全くかわらない笑顔で誘いかけるよりは、ものすごく良心的なのですが)、「武志に手を出すな!」を繰り返して、ヴァニーナイツから武志君をかばおうとする和幸君。でも、ヴァニーナイツは、和幸君を突き飛ばして、必殺技を放つ。
 この第11話『フジタ・カズユキ』の話を聞いたときから想像していた、和幸君の泣き顔、思い浮かべました。



うそ。
見せてもらった、奇跡。

 効果はわからないけれど、回復系の技じゃないことは確かそうな必殺技。
 それを受けたのは、武志君の前に飛び出した和幸君でした。
 だからって、どうにもなるわけないじゃない、のはずだったのですが。
 技を受けて、全身に白い光を帯びた和幸君が武志君を振り返ると、和幸君の瞳が金色に光り、その光が魔物になってしまった武志君に届き、叫び声をあげながら魔物が倒れる…というところで、フェードアウト。
 次のシーンは、変身の解けた三人娘にのぞきこまれながら、和幸君が目を覚ますところ。
 そして信じられないことに、起き上がった武志君も、もとの武志君に戻っていて。
 せらむん級の、奇跡。和幸君も、武志君のうさぎちゃんだった。
 武志君が変わった魔物に突き倒されていた有子姉に、和幸君は、武志が有子を助けてくれたんだよ、と言い。そうだったの、と聞かれて、いや、という正直者な武志君に、絶対そうだよ、この目で見たもん、と和幸君は武子君に有子姉の手を握らせて「ちゃんと守ってやらなきゃだめだぞ」。
 武志君、こんなに露骨に譲られて有子姉と結ばれるなんてかっこわるい、などと思わせないのが、続いて和幸君に「俺の分までな」と耳許でささやかれての武志君の表情。戸惑うような、迷うような表情でうつむいていく、そのあいだに、ほんっとうにしあわせそうな微笑みがゆっくりひろがっていくところ、感動的でした。
 …あの回想シーンを何度繰り返し流されても、結局、和幸君は武志君のこの笑顔で落ちたんじゃないの、と思ってしまうほど(笑)!

 この物語が気持ちがよかったのは、誰かひとり絶対的な優しさと力をもった“うさぎちゃん”がいて、そのひとりだけがみんなを救う、というおはなしじゃなかったからだと思います。和幸君と武志君の間では、お互いがお互いのうさぎちゃんだった。どちらも等しくかけがえのない、大切なひとだからこその、物語だったと思います!






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