少年サスペンス
謎の男子転校生


前編(Part 1)
(1998年9月10日放映)

■ 出演 ■
加藤俵太:天野浩成  佐伯勝:大柴邦彦  桜井有子:浅川ちひろ  ヤスエ:西田ももこ
田宮博之:安達哲朗  志村浩代:鈴木理恵  青山恵津子:実田江利花
長谷川修一:坪井森司  増田剛:坂本裕史  小池春雄:堀江慶  ほか



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 物語は、レースのカーテンのかかった窓の映像から、意外に静かに始まります。
 見るからに女性の部屋。
 バスケットのように編まれた鏡台の上には、いかにも南国のリゾートで撮りましたという感じの、レイをかけたアロハシャツの男の子(天野さん俵太君)と女性の写真。
床の上には…
点々と脱ぎ捨てられた、黒の下着が一点、二点、つづいて色鮮やかなスカーフ。
ベッドの脇のペアのスリッパは不思議と揃えて脱いであるな、と思っていると、それらを脱いだとおぼしき男の子の素足がにょっきり。
続いて、どっちがどっちか一見わからないぐらいごちゃごちゃに(笑)、男の子の脚、女性の脚、男の子の脚、女性の脚。
鳴り響く目覚まし時計。
ベルの音を止めるのは、女のひとのほうの手。
起きて部屋を出ていくのは、男の子のほう。ベッドを出た後ろ姿は、きれいにはだかんぼ(笑)。
眠そーうな、女の人の声。
「ひょうちゃーん、おきたのぉー」
朝です。


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 はだかんぼのまま、歯みがきをするのは、主人公・加藤俵太君(Cast:天野浩成さん)。
 「偉いじゃない! ちゃんと起きちゃうなんてー」と、フレンドリー全開でにこにこして後ろから抱きつくのは、天野さん俵太君より結構年上っぽい、ヤスエさん(Cast:西田ももこさん)。
おねえさんのだきつきに、俵太君、いやがってヤスエさんを払いのけるのですが、その仕草がぶっきらぼうで、でもどこか幼さが残っていて、なんともいいです!
「もぉ、寝起き悪いんだからぁー」(ほんとにそんな感じ【笑】)というヤスエさんに「寝てろよ!」とうるさそうに言う俵太君(反抗期?【笑】)。「起きちゃったもん!」とすねるヤスエさん、甘え声ですが、随所におねえさんならではの語りかけをみせる、深いキャラクターです。
おねえさま攻撃(笑)は、俵太君の髪の毛を撫でながら話しかける手つきあたりから。乱れた髪をなおす手、小さな動物に触れるみたいな優しい動きですが、最初に触れられたときまた俵太君が首をひねって、ちょっといやがる反応もまたいいです。
「本当に行くの?」
俵太君の返事は、思い切りぶっきらぼうな「メシ!」。
でもおねえさんは会話を放棄しません。「ねえ、この間の学校はどうして辞めちゃったの?」
きけばちゃんと答える俵太君。「つまんねーから!」
「今度の学校は?」
「おもしれぇんじゃないの」
「どうしてそんなことがわかるのよぉ?」(もっともな質問です、ヤスエさん!)
「共学だからー!」
意外なぐらい平凡な答えですが、その答えを聞くやヤスエさん、突然、俵太君の股間を握りこみ攻撃!
「ダメよ! 使っちゃ!」
これから全編にわたり、随所に豪快さを見せる俵太君ですが、ヤスエさんに、しっかり握られてます…(口に含んでたお水、飲んじゃったかな?)。


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 制服に着替える俵太君。
 朝食を作るヤスエさん。
 この朝食が、大きなステーキ! ジュージューとおいしそうな音を立ててステーキが焼かれる調理の手許を、真上から撮り下ろすアングルの映像、印象的(このアングルで食卓を撮る方法、作品中何回かリフレイン)。
ステーキを焼いているヤスエさんは、大きな柄のついたブルーのバスタオルだけを巻きつけ、髪をクリップでアップにした、夏っぽい(でもあんまりそれでごはんはつくらなさそうな)スタイル。
「ねえ、本当に行くの?」 前の学校で俵太君、よっぽど学校行かなかったんでしょうか!
どん、と食卓に着いた俵太君、リモコンのスイッチでテレビをつけるしぐさがちょっとお父さん(笑)。
「大学まで行った私が思うに、学校行ってもあんま意味ないと思うんだよねー」
おねえさんなヤスエさんの助言ですが、俵太君は何も聞いていないかのような顔で、無表情にテレビを眺めてます。
「やっぱりさあ、人間、裸で勝負でしょ!」このヤスエさんの言葉を文字通り裏づけるように、この物語で何度も登場する俵太君の裸の身体、とても立派でうつくしいです。そういう若い肉体あってこその、この物語、と思えるぐらい。
美味しそうに焼き上がったステーキを、テーブルに置きながらヤスエさん「おまたせっ! 今日はちょっと小振りっ!」と言いますが、真上から撮られた鉄板の上の大根おろしののったステーキ、ぶあつくて大きく、インゲン、ニンジン、ジャガイモのつけあわせつき。すごいです!
俵太君、食べる前に、顔の前で左手の手のひらに右手の拳を突きあわせての無言の「いただきます」。そしてお箸で、黙々と豪快に食べ始めます! 大きなお茶碗に山盛りの白いごはんも出されて、それも!
その様子を静かに見つめるヤスエさん、ポツリと「私…俵ちゃんの子供欲しいなぁ…」。 そのあと「ねえ! 今度の日曜日仕込むー?」と軽く落としてますが、俵太君に見せていないそれまでの表情は、真剣。こうして随所に表れる、ヤスエさんってほんとに俵太君のこと一生懸命好きなんだなあ、ということが、物語の最後になってすごく、きいてきます。
また真上から鉄板を撮り下ろした絵が、コマ送りのように、ポンポン消えていくステーキをリズミカルに映して。
最後に空っぽの鉄板が映ると、また手を合わせる無言の「ごちそうさま」をする俵太君に、缶飲料を渡したヤスエさん、深々とおじぎをして「おそまつさま」。
食べ終えると俵太君、学校です。
玄関で「いってらっしゃいー!」と見送るヤスエさんに、「おやすみぃー」と返す俵太君。ヤスエさんは夜のお仕事らしく、生活時間帯もすれ違っている二人の関係が成り立っていることの不思議が浮かび上がる瞬間。
と、「ヒョウちゃん、転校手続きの書類!」と、俵太君の忘れ物に気づいたヤスエさん。振り返る俵太君、正面からの映像ではぶっきらぼうな男の表情でとてもしぶいのですが、ちょっと引いた背中からの映像では、振り返っている様子がちょっと可愛かったりするのが味(笑)。
裸にバスタオルのまま、エレベーターに乗り込む俵太君に「ヒョウちゃんっ!」と声をかけ、書類を手渡すと、いきなりまとっていた青いバスタオルの端を両手で掴み、その前をばっとひろげて「がんばってねっ!」。
人目もはばからず、その格好で無邪気に俵太を見送るヤスエさんもヤスエさんですが、他の人も乗っているエレベーターの中で全く動じた気配もない俵太君、大物です!


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“私立白金台高等学校”の校門。
教室の風景。
「加藤俵太」と書かれた黒板の前に立ち、クラスの生徒たちの様子を眺める俵太君。
教室の後ろの隅にいる、悪ガキそうな三人組。
笑い合う、女の子二人組。
うるさそうにしている、度の強そうな眼鏡をかけた男の子。
化粧する男の子、笑っている女の子達…
ガヤガヤと騒がしい教室は、担任の斎藤清美先生(Cast:星川なぎねさん)が、「静かにしなさい!」といっても、全く聞く耳もたずにざわついたまま。
あきらめた清美先生、ざわついたままの教室を前に「それじゃあ加藤君、みんなに挨拶」。 ちょっと睨みつけるように先生を見る俵太君。
促されて自己紹介をはじめた俵太君、ざわついたままで聞いちゃあいないクラスの前で、突然、静かに歌いはじめます。
「せぇぇぇんろはつづくぅぅぅよぉぉぉ」
目をみはって横目で俵太君をみる担任の清美先生。
「どぉぉぉこ まぁぁぁでぇぇぇもぉぉぉ」
教室を少し見下ろすように眺め回して歌う俵太君。
「のぉぉぉをこえ やまこぉぉぉえぇぇぇ」
突然歌いだした俵太に、呆気にとられる、女の子二人組、眼鏡の男の子、悪ガキ三人組、クラス全体…
「たぁに こぉえぇてぇー」少し高いところを見上げるようにして歌い続ける俵太君。
静まる教室。


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続いて、タイトルバック映像。
10人のホラー系のゴムマスクをかぶった少年少女達が、金属の手すりの円形階段の下に、強い光に照らし出されて立つ映像。
彼等が次々にマスクを脱いで顔が表れる、その映像にあわせてその役名・キャスト名が出され。
最後に10人のメインキャストさんが立つ映像に、ちょっとエヴァンゲリオンを想起させる黒の活字で“謎の男子転校生・前編”のタイトル。
スピーディーで動きのある、独特の雰囲気をもつ映像!


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