少年サスペンス
謎の男子転校生 |
前編(Part 2) (1998年9月10日放映) |
■ 出演 ■ 加藤俵太:天野浩成 佐伯勝:大柴邦彦 桜井有子:浅川ちひろ ヤスエ:西田ももこ 田宮博之:安達哲朗 志村浩代:鈴木理恵 青山恵津子:実田江利花 長谷川修一:坪井森司 増田剛:坂本裕史 小池春雄:堀江慶 ほか |
鳴り響くチャイム。 人影のないベランダにある机の上にあぐらをかいて座っている俵太君。 遠い目をしながら、ぼんやりと外を眺めて、幼い頃の事を思い出す…。 |
自転車に乗って疾走する二人の少年。小学校高学年ぐらいの、俵太君(Cast:天岸将さん)と勝君(Cast:古田島正一さん)。 自転車から降りると、階段を猛ダッシュで駆け上がる二人は、なにか物を服の中に隠し持って、それを落とさないように大事に抱えている。 小さい俵太君と小さい勝君が、廃墟と化した建物の前に座り込んで、服の中から取り出したのは、スーパーで万引きした品物。 そこへ、スーパーの店員らしいおじさん(Cast:たなべかつやさん)が二人を指さして、一緒にいる警官にむかって「あっ! あいつらです、あいつら!」 階段を駆け上がってくる二人の大人に気づいて、逃げ出す小さい俵太君、勝君。捨てられた机の下をすばしっこくくぐりぬけ、階段を駆けのぼり、何とか逃げ切って原っぱに転がり込むと、あおむけになって大の字に。息絶え絶え。 「やばかったな!」「食いもんこんだけになっちまったよー」「捕まるよかいいよー」「まあなー」という小さい俵太君、勝君。 勝君は、俵太君に残った食べ物をわけてあげたりしています。 仰向けで寝転がっている二人。二人の上に広がる空。 ぼんやりと空を見つめながら、食べる二人。 小さい俵太君「まあちゃん…」と勝君に呼びかけ「大人になったら何になりたい?」。 「何になろぉかなぁー」と迷う勝君、逆に「俵太は?」。 俵太君、笑顔で「俺、社長になりたい!」 勝君も「いいじゃん! 俺も俵太と一緒に社長になるよ!」俵太君「うん! 二人で社長になろう!」 勝君が「社長になったら何する?」と尋ねると、俵太君、身体を起こして「さっきのスーパーにお金返しに行く」。俵太君の不思議な個性が光ってます。 そうだな、そうしよう! と応えてくれる勝君にうなずく少年時代の俵太君から、現在の俵太君へと、映像は幻想的に移り変わります…。 |
目を閉じた俵太君が、人の気配を感じて目をあける、このアップ映像、感動的にきれいです! 印象的な目が閉ざされているだけに造形のきれいさが浮き彫りになる寝顔、くっきりと二重瞼になっているところがきれいな半眼の表情、視線を横に流したときの目の表情、そしてちょっと目をみはった顔、と、一枚一枚止め絵にしてめくりたいぐらいの映像! その俵太君の目の前には、体操着姿の二人の女の子、志村浩代ちゃん(Cast:鈴木理恵さん)と青山恵津子ちゃん(Cast:実田江利花さん)。俵太君の顔を、じっと覗き込んでます(遠慮ナシ【笑】!) 二人に間近で見つめられて戸惑う俵太君、基本的に二人を睨みつけるような感じで強さを崩していないのですが、微かに後ずさって一瞬目が泳いでいるところが、ちょっと天野さんカラーでカワイく(笑)。 浩代ちゃん「寝顔は意外と可愛いんだ。 俵太君、ややにらんでますが、ムスメ達は全く動じず笑みをこぼしながら「私、浩代。」「恵津子。」。遠慮のないムスメ達に、俵太君、思いっきりやな顔で「何?」。 ずっと引いて廊下側から三人を横向きに撮った映像には、俵太君が座った机に両手をついて、乗り出すようにしている二人のムスメが映し出されています。 「興味持っちゃったの、俵太君に」「そう」という恵津子ちゃん、浩代ちゃんに、俵太君、押され気味に「そう」。 浩代ちゃん「さっき唄ってたのって、何の歌?」 恵津子ちゃん「懐メロ?」。『線路は続くよどこまでも』も知らないムスメ達に、俵太君、ちょっとふてくされた声で「いいよ、知らなくて」。 体操服姿の二人は、ちゃんと体育の授業に出る気があるらしく「じゃあ、またゆっくり!」と立ち去りかけますが、俵太君に「行かないの?」。俵太君、全く出る気がなかったらしく「ん?」と、不意を突かれた天野さん的なやわらかい声(笑)。「行かないの? 初日でしょ?」という浩代ちゃんに、俵太君、結構大人っぽい声で「あとで行くよ」。そして空に目をやりながら、ちょっとめんどくさそうに「あーとーで!」。 「じゃ!」「じゃ!」と、声を交し合った俵太君の目は、校庭に下ろされると、鋭くなっていきます。 校庭で体操をしている生徒達の映像。俵太君がぼんやりとみつめているその光景、なんともデザイン的で、映像に不思議な感じを与えています。 |
そこへ、体育の授業なのに制服姿の、眼鏡の男子生徒が。 その男子に目をやる俵太君。 俵太君の視線に気づいた田宮博之君(Cast:安達哲朗さん)、鬱陶しげに「何か?」 「お前、体弱いのか」と尋ねる俵太君に「体育は別に、将来役にたたないですから」と断言。「健康にいいんじゃないの?」という俵太君のやや投げやりなコトバは、が「そういうキミだって!」というもっともな突っ込みを入れられてしまいます。 でも、俵太君にじっと見つめられると、田宮君、少し緊張気味に。「いやっ、いいんですけど…」という言葉、どぎまぎしてます(笑)。 校庭の体操風景。 列になって踊るように動いていく女子。 腕と身体を屈伸する男子。 それを眺めていた俵太君、田宮君に「おい。あいつらは?」 ベランダを進み出てきた田宮君が校庭を見下ろし、俵太君の目線の先にいる人物を探すと、そこには座り込んでやる気なさそーうに腕だけ動かしている、悪ガキ三人組。 田宮君の解説。「シュウにゴウにハル。二年の中では、結構うるさがられてる奴等なんですよ。関わらない方がいいですよ。教師にも見放されていますし」 その言葉を聞いて、微妙に表情が動く俵太君の横顔。 「壊れているんですよねえ、人間が。まあ、人に迷惑をかけない程度の壊れ方ですから、僕から特別忠告するようなことはないんですけれど。もし、迷惑をかけるようなことがあれば、そん時はビシッと、言うつもりではあるんですけれどね」という田宮君に、俵太君、皮肉に口許をゆがめてから「ビシッとね」。 と、校庭に、浩代ちゃんと恵津子ちゃん。その二人に目をとめる田宮君。俵太君と田宮君の姿を見つけて、無邪気に手を振る浩代ちゃんと恵津子ちゃん。 田宮君、この二人も酷評。「あの二人も同類ですね。青山恵津子と志村浩代。男を男として見ていないですね。故に、女がなんたるかも判っていない。女子高生というものが、いまだに武器だと思っている」 こんな田宮君に俵太君「数学が将来役に立つのか」 田宮君「体育よりは…」 でも、俵太君の前では、もっとちゃんと理由がないといけない気分になる田宮君。「ほら、体育って、何か割り切れないじゃないですか。僕、割り切れないものに興味ないんですよ」 沈黙。 田宮君、少しあわてたような早口で「世の中と一緒ですよ。政治、経済、社会。元々の真理は全て見つかっている。既に答えが出ているじゃないですか。それに…」 田宮君の言葉は、俵太君の言葉でさえぎられます。「けど」 ささやくような、それでいて存在感のある口調での俵太君。「出ないもんの方が、面白れえんじゃねえかな、答えはさ。俺ん中じゃあ、割り切れねえもんだらけだからさ」 そして「お前みたいな学者さんも、面白い事に出逢えば判るよ」。このときの俵太君の横顔がまた、ほんとうにきれいです。(そしてこの瞬間から、田宮君のコードネームは“学者”に決定!) そんな俵太の言葉を複雑な表情で聞いている“学者”君。 |
下校中の俵太君に「加藤君! …だったよね?」と後ろから声をかけるのは、悪ガキ三人組の一人。 「あのー、俺、同じクラスの小池」。小池春雄君です(Cast:堀江慶さん)。 関心なさそうに「そう。」と返す俵太君に「ちょっと時間ー、くんねぇかな。すぐすむからさ」。 そして、俵太君の幼い頃の回想シーンに出てきた階段を上る二人。 懐かしそうにあたりを見回して笑顔になる俵太君をいぶかしんで、春雄君「どうしたの。何がおかしいの!」。俵太君「いや。何かここ、久しぶりに来たなあって思って」。春雄君「そ」。 そして建物の中に入っていく春雄君。建物に入るときも、なつかしそうにあたりを見回している俵太君。 |
建物の中で、春雄君に背後から羽交い締めにされている俵太君、いきなり左頬を思い切り殴られ、苦痛の叫び声! 建物の中で待ち伏せていた春雄君の仲間の修一君と剛君、春雄君と三人で俵太君に乱暴。 殴りつけたのは長谷川修一君(Cast:坪井森司さん)。俵太君にむかって「お前さぁ。何か勘違いしてんじゃねぇえかと思ってさ!」 口の中が切れて血だらけで、言葉がはっきり出せない俵太君、激しい怒りを込めて「わけわかんねえよぇ!」 今度は増田剛君(Cast:坂本裕史さん)が、俵太君のおなかに拳をたたき込む! 「普通、転校生っていうのはよ」と、俵太君のさらさらの髪の毛を掴みながら怒鳴る剛君、ポタポタと血が滴り落ち、うめいている俵太君に向かって「ヨロシクぐらいあって当然じゃねえかって、いってんだよ!」 そう言われて俵太君、苦しそうに息をしながらも「俺…普通じゃねえから!」と、本当のことを。当然のなり行きとして修一君は激怒、また俵太君の顔を殴りつけ。俵太君の苦痛の声はあがる、ピチャピチャと血の滴る音はする、と、惨憺たることに。 苦しそうに息をついている俵太君に、わかってないねえキミは、俺達は今その挨拶の機会を与えてやっていろぉが、と親切に教えてくれる三人ですが、剛君が俵太君のみぞおちに膝蹴りを入れるなど、ほんとうにあいさつを聞く気があるのかは謎。俵太君は苦痛のために身体を折って、口の中からポタポタ床に滴り落る血にむせるばかり。 それでも、身体をねじって思いっきり血反吐を床に吐き捨てて、俵太君、修一君達をゆっくり眺め回し睨みつけながら「よろしくぅ」 こんな“よろしく”は、悪ガキ三人組的にうれしくありません。修一君「てめえには感情ってもんがねえのかよぉ!」ということに。 これには俵太君、声を荒げて「なんか面倒くせえなぁあ!」。殴る蹴るされていることより、面倒くさいことのほうがいやという、俵太君的価値観! もちろん悪ガキ三人組はさらに怒り、修一君は、俵太の胸ぐらを掴んで振り回して思いきり柱に叩きつけ、よろめく俵太君をさらに殴り、床に叩きつけ、倒れた俵太君の頭を何度も蹴りつけるという乱暴ぶり。 激しい痛みに顔を歪めた俵太君も、意識が遠のいてきたのか、ぐったりしてくるまでに。 |