少年サスペンス
謎の男子転校生



前編(Part 3)
(1998年9月10日放映)


■ 出演 ■
加藤俵太:天野浩成  佐伯勝:大柴邦彦  桜井有子:浅川ちひろ  ヤスエ:西田ももこ
田宮博之:安達哲朗  志村浩代:鈴木理恵  青山恵津子:実田江利花
長谷川修一:坪井森司  増田剛:坂本裕史  小池春雄:堀江慶  ほか



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夜中、学者君の家の玄関前。
部屋のドアから出てきて外を見た学者君、血塗れの制服、傷だらけのその姿を見てびっくり。「加藤君!」
俵太君、玄関のドアによりかかっているような状態ながら、意外に元気そうな明るい声で「よお!」。
そして「お前、クラス名簿持ってるか?」


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名簿を貸すだけかと思いきや、どういうやりとりがあったものか、名簿を手に俵太君に付き添い、住所を確認している学者君。
「ここが小池の家です」と教えられると俵太君「ちょっと行ってくるわ!」と、手に持っていたカバンを学者に預けて、春雄君の家の中に。
心配そうに見送る学者君。

そしてここから、俵太君の大逆襲!

部屋の中で座り込んでマンガを読んでいた春雄君、入ってきた俵太君にいきなり顔面に蹴りを入れられ、何が起きたのかわからないまま自分の血をみてぼうぜん。
そして俵太君は、渾身の力を込めて、一心不乱に春雄君を殴る、殴る、殴る!

春雄君を叩きのめした俵太君、外で待っていた学者君の前に現れると、晴れ晴れとした表情、さわやかな声で「次、行こっかあ」。
すたすたと歩き出す俵太君に、学者君「あの、こっちなんですけど…」。
学者君に預けていたカバンを、引ったくるみたいに受け取って歩き出す俵太君、カワイイです(笑)。

剛君のところは、お風呂でシャンプー時の襲来!
背後からいきなり蹴りを入れられ、切れた口の中から血がタイルにぱっと飛び散り。
抵抗しようとしても俵太君は剛君の手を強引に押さえつけ、おなかに一撃。
最後の顔面への一撃で、剛君は浴槽に顔面から突っ込み。
白く濁ったお湯にぱっと散りひろがる、血の赤があまりにも鮮やか。

修一君はいきなり、集合住宅の廊下の床に、叫び声を上げて転がっている状態。
コツコツと、足音をたててゆっくりと近づく俵太君。
最後のひと蹴りで、階段を転げ落ちる修一君!


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圧倒的な大反撃とはいえ、さすがの俵太君も、三人を次々に相手にしての乱闘に、息も絶え絶え。
それでも、落とし前をきっちりつけて、満足げな俵太君。修一君の姿を眺めてから、その場から立ち去ろうとすると。
どこからか手を叩く音が聞こえ、ふと足を止める俵太君。
ドアの陰から覗いている一人の女子高生の姿。
今の俵太たちの壮絶な喧嘩を見ていた、高校生らしい小島恭子さん(Cast:田口しおりさん)が、俵太に向かって拍手。
そして、こっちに来てと手招き。


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剥き出しの白熱電球の光に照らされた薄暗い部屋。
大人の男の人(Cast:チョコさん)が座っているそこに入ると、男の人「何なんだ、このガキ?」
恭子ちゃんが、俵太に説明した経緯。「デートだけって約束で逢ったのにさあ、さんざんっぱら人のこと連れ回したあとに お金がないって言うの。家に帰ればあるから、ついて来いっていうからついて来たのに、こんどは私のことやろうとしたんだよ? もー信じらんなーい!」
サラリーマン氏「やろうとなんかしてない!」恭子ちゃん「したでしょ!?」サラリーマン氏「していないよ!」恭子ちゃん「いいからお金払ってよ!」サラリーマン氏「ないもんはない!」
恭子ちゃん、俵太の腕を掴みながら「どう思う? さっきの子みたいにさあ、階段から突き落としちゃってよ」とコワイことを。そして「この人からお金貰えたら、半分あげてもいいんだけど」。
ゆっくりと振り向いた俵太君、恭子の最後の一言で、表情が変わります!
白熱電球を挟んで、対峙するサラリーマン氏と俵太君。
「おっさん」俵太君、電球のソケットの上の部分を掴み、ドスの利いた低音の声で「今時、援交もないと思うけどよお。あのこやろうとしたわけ?」
サラリーマン氏は否定しますが、俵太君が「したんだろ?」と確認すると、恭子ちゃん「押し倒そうとした」。それを聞いた俵太君、サラリーマン氏を睨みつけ、怒った声で「したんだよねえ!」。サラリーマン氏が再度否定すると、俵太君、今度は恭子ちゃんに「証拠は?」。髪の毛を掻き上げる恭子ちゃん、俵太君にその首筋を見せて「捕まれたときのアザ」。
それを見た俵太君、電球を男の顔に近づけて凄みながら「一回、流したことのない量の自分の血ぃ、見とくかあ」…これはこわいです! サラリーマン氏、震える手で財布を取り出してます…。


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表で俵太君を待っている学者君。
ポケットに手を突っ込んで、軽やかな足取りで階段を降りてくる俵太君。「お待たせ!」
そして、学者君に笑顔で「ありがとな!」。「あっ、いえ!」と返した学者君、完全に“落ちて”ます(笑)。
俵太君の後ろにいる見知らぬ女子高生の姿に、誰?という表情の学者君。
恭子ちゃん「あっ、そうだこれ。約束のお金」。
俵太君が男に出させたお金から、約束通り、半分の2万円をくれました!
「助かっちゃったあ。ありがとう!」という恭子ちゃんに「あんな男たちとはつき合わない方がいいぞ」という俵太君、天野さんキャラクターの多くに共通する優しさ、もう見せてます。
そして、受け取ったそのお金を、当たり前のように「はいよ」と学者に渡す俵太君。
事情がよく飲み込めないで戸惑う学者君に俵太君、とどめのような朗らかな笑顔で「おもしれえだろ?」
一瞬の沈黙。
学者君の明るい返事「お、おもしろいっす!」。これで決まりです(笑)。
俵太君、ほんとうに面白かったようで、にこやかな笑顔でその場を後に。


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夜の繁華街。
お店のお客さんを路上で見送るヤスエさん。お触りしてくるお客さんを軽く「だーめ!」とあしらい「また、今度ね。どうもありがとうございましたー!」と明るくお別れするあたり、ヨユウです。
そこに、佐伯勝君(Cast:大柴邦彦さん)と桜井有子ちゃん(Cast:浅川ちひろさん)、三人のヤクザ(Cast:島裕二さん、村上栄さん、中垣章人さん)が連れ立って歩いてきます。勝君と有子ちゃんにに気づいてヤスエさん「勝くーん! 有子ちゃーん!」
振り向いた二人「ヤスエさん!」と驚きながら「お久しぶりです!」。「元気?」とたずねるヤスエさんに「おかげさまで!」「はいっ!」と明るく答える勝君、有子ちゃん。
「ヤスエさん、ここの店なんすか?」などと尋ねてから勝君、「あいつ…元気ですか?」。
「うん! 今度、実家の近くの高校に転校したの!」とヤスエさんからきくと、勝君、明るい口調で「そうなんですか!」
「通っているのは私のマンションからだけど」とヤスエさんが笑うと、笑みのこぼれる勝君と有子ちゃん。
「近いうち、遊びにいらっしゃいよ!」というヤスエさんに「ありがとうございます。それじゃあ」と爽やかに告げた勝君ですが、申し訳なさそうな低姿勢で、後ろで待たせているヤクザたちに「すみません」と声をかけています。そして、ヤスエさんに見せていた屈託のない表情とはうってかわった、どことなく険しい顔つきで、勝君と有子ちゃんはその場をあとに。


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マンションにヤスエさん、花束を抱えての帰宅。「ただいま」
と、青い部屋の暗がりに、もれてくる浴室の白熱灯の光。
その光の中、浴室の前に無造作に脱ぎ捨ててある、血まみれの俵太君の制服。
浴室を覗いてヤスエさん、俵太君に「なに?」。シンプルな尋ね方が、機微。
俵太君、案の定「なにが?」。
湯船にひろげた両腕の肘をかけてゆったりとつかり、目を閉じている俵太君。
「そのお湯?」浴槽の中の濁ったお湯は、血のように真っ赤。
俵太君、面倒くさそうに「新しい入浴剤!」

俵太とヤスエさん、二人でなかよくお風呂。
「どこの温泉の入浴剤よ」と追及するヤスエさんに、俵太君「別府」。「血の池地獄!」とのこと。
しらばっくれる俵太君を、ヤスエさん、強引に後ろ向きにさせて「背中流してあげる!」と、ブラシで背中を擦りはじめます! これには俵太君思わず「い・た・いってー!」。傷口、痛そうです!

ヤスエ、突然思い出したかのように「あっ!」と声をあげ、「ねえ、勝くんとばったり会ったの!」
俵太君、不意をつかれたように振り向いて、ヤスエさんの顔を見つめて「まあちゃんと…?」(この声がまたやわらかく!)
「うん。有子ちゃんも一緒に。勝くん、羽振りよさそうだったよー」というヤスエさんに、俵太君「そっかぁ…」。
そして、子供の頃のことを思い出します…。


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モノクロームの回想。
ランドセルを抱えて座っている、小学生の頃の俵太君、勝君、有子ちゃん(Cast:小山万璃音さん)の三人。
俵太君と勝君にはさまれた有子ちゃん「私…ヒョウちゃんも、まあちゃんも、どっちも好き」
勝君「そんなんダメだよ!」俵太君「どっちか選ばないとダメだよ!」
でも選べないで、目をふせる有子ちゃん。
その姿は、モノクロームのまま、髪をふたつに結った、中学生ぐらいの有子ちゃんの姿に。
有子ちゃんは伏せたままの瞳を、勝君のほうに揺らし、俵太君のほうに揺らし、そして目を、さらに伏せて。
「私…まあちゃんが好き」
顔をそむける俵太君。
素直に喜べず、複雑な表情を浮かべる勝君。
ある時代の、終わり。


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「ヒョウちゃん? 聞いてる?」
ヤスエの声に我に返った俵太君「ええ?」と、うるさそうに返事。
ヤスエさんは、さっきまでとは違う、真剣な表情。
「ヒョウちゃんも好きだったんでしょう? 有子ちゃんの事」
俵太君のほうは「くだんねぇこと、言ってんじゃねえ」ですまそうとしますが、ヤスエさん「知ってるもーん!」と、俵太君の身体を急激に捕らえて、触れる。
びくり、と体を震わせる俵太君。
「だって、ヒョウちゃん…」
振り返る俵太君は。
「俵ちゃん、だめえっ!」
断ち切るように俵太君がヤスエさんに触れて、青い部屋に響く、ヤスエさんの声。


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