ウォーキング・スタッフ プロデュース
SOLO


天野さん御共演者様: 森本亮治さん
(『仮面ライダー剣』)

 2006年11月18日(土)夜は、『仮面ライダー剣』相川始役で御共演の森本亮治さん御出演の舞台、ウォーキング・スタッフ プロデュース『SOLO』を観に行きました!
 劇場は、9月19日に増沢望さん御出演の舞台『いとしのエミー』(【天野浩成さん共演者様作品見聞録:いとしのエミー】)を観た新宿・シアタートップス。全くの偶然ですが、その時と同じ席番号の席だったという…
 パイプ椅子を並べての実際の席数は100席ぐらい、と、小さな劇場とはいえ、その偶然、すごすぎ!(笑)


  で、作品ですが、2時間ちょっとの時間を、ものすごい緊迫感と先の展開(というのも、この劇の構造的には厳密にいうと違う?)への興味で、目をらんらんとさせて観てしまった! という面白さ。
 『SOLO』は2003年に上演された作品(そのときは『ヤマダ一家の辛抱』の雛形あきこさんがトップクレジット、で、森本亮治さんが演じられた役はなんと、【千年王国3銃士ヴァニーナイツ】で、天野さん井下武志くんをセラムン級の奇蹟を起こして救ってくれたフジタ・カズユキを演じられた、グレートチキンパワーズの渡辺慶さんが演じられていたという![だから役名“渡辺ケイ”だったんですね…まんま!!])の再演とのことですが、再演される作品というのはストーリーの面白さがあってこそ再演されるわけで、さすが! という感じでした。
(シアタートップスでこのあいだ観た増沢望さん御出演の『いとしのエミー』も再演作品で、さすがに面白いなあと思ったのですが、同じ劇場の同じ席で、同じ事を思うとは【笑】)


 まず、物語のラストシーンを見せ、暗転するとスクリーンに“THE END”の文字が出るところからスタートし、時をさかのぼっていくという構造の、この作品。
 姉(星野園美さん)の葬儀の日、号泣する妹(山田まりやさん)、自分のせいだと謝る占い師(田島令子さん)、姉殺しの嫌疑をかけられ、自分は違うと必死に言い募る妹の夫(鈴木省吾さん)…というシーンから始まり、全身を防護服に包んだ“なんでも屋”(森本亮治さん、牧田明宏さん)による姉の殺害シーン、そこに至るまでの直接の経緯と人間関係が垣間見えるシーン、妹の夫が姉の殺害を冗談交じりに依頼した音声の録音を手に恐喝に来たなんでも屋に妹が姉の殺害を依頼するシーン、家の改装に来たなんでも屋(森本亮治さん)に妹の夫が姉の殺害を依頼するシーンであると同時に、妹を暴行したというなんでも屋のアルバイト(牧田明宏さん)と妹夫妻の再会、全ての発端となる占い師(妹の夫が妹との結婚前からずっとつきあい、子供までもうけていた女)が妹と出会い、それまでの人間関係を変える発端となるシーンまで、時をさかのぼるごとに新たな事実が、ときにその前に演じられたシーンで観客に伝えられた事実を裏切るようにして明らかになっていき。
 ミステリの謎解き的面白さだけでなく、もっと深いものも明らかになっていって、息をつめるようにして物語の行方を見守ってしまいました!


 真実が少しずつ明らかになっていくにつれて、どの人物が“怖い”と感じられるかが移り変わっていくのも、この作品の面白さ。
 (それだけ、人間の怖さが描かれている作品!)
 以下、お一人ずつ、断片的ですが“怖さ”という観点を軸に、感想。


 この作品についてここで書いているのは、天野さんと共演された森本亮治さんが御出演だから…ということなのですが、観に行くにあたってものすごく楽しみにしていたのは、山田まりやさん。
 『本気!』シリーズで、子組の夢作アニキ役で天野さんと共演されていた小野寺丈さんプロデュース・作・出演で、『本気!』シリーズ本気さん役の石橋保さんまで出演された舞台『CHILDREN』にヒロイン的役どころで出演されていて、その舞台がすごく良かったもので!(【天野浩成さん共演者様作品見聞録:CHILDREN】
 山田まりやさんは、心に深い傷を持った人物を、緊張感をはらんで演じられる姿が迫ってくる役者さんだなあと、しみじみ。
 (『CHILDREN』でも、その心の傷の深さが伝わる哀しいラストにシビれました!)
 冒頭からずっと泣き、怯え続ける彼女は“怖い”人間よりも“怖い人間に脅かされる”人間、という感じなのですが、ラストシーンまで観て冒頭のシーンを振り返ると、彼女が一番“怖い人”かもしれないという…
 でも、その“ラストシーン”が、たまらなく解放感や爽快さを伴っているのが不思議。
 そう感じてしまうこと自体が、観ている自分の人間としての“怖さ”かもしれないと思うほどに。


 森本亮治さんには、こんなに面白い作品を観るきっかけをくださって大感謝!!
 森本さん演じる“なんでも屋”ケイは、関西弁の愛想のいい兄ちゃんという顔の裏に、恐喝や殺人といった犯罪もやってのける“ワル”な面があるという“怖さ”があり。舞台上の演技・演出としても、ごっついウォレットチェーンをじゃらじゃらさせた若者スタイルで、だん! と強い音を響かせて跳んだりする動きには、思わずびくっとしてしまう、何をしでかすかわからない無軌道な若者的怖さが、見事に表現されていたような。
 でも、その“怖さ”も、他の人物の“怖さ”に比べると、浅く、その“浅さ”がケイの存在意義という感じも。
 特に、ケイにパシリのように使われているずっと年上のバイト君・工藤と、どちらが“怖い”かが逆転する瞬間のあざやかさと、その逆転を感じた森本亮治さんケイの鼻白んだ表情しぐさ、絶妙でした!


 その“工藤くん”牧田明宏さん。
 森本亮治さんケイに、山田まりやさん・鈴木省吾さん夫妻との関係を尋ねられて、殴って、ネクタイで手をしばって、さるぐつわで…と、淡々と強烈な暴行の詳細を語るシーン(森本さんとの“怖さ”関係逆転の瞬間!)は、その茫洋とした表情雰囲気が、底知れぬ怖さ!
 最終的には、ラストシーンの山田まりやさんの告白で、山田さんと牧田さんが関係したのは山田さんが誘った、ということが明らかにされ、本当に怖いのは山田さん? とも一瞬思ったのですが、でもやっぱり、そういう一切を黙って飲み込んで、星野園美さん姉と森本亮治さんケイの殺害と、鈴木省吾さん夫を陥れる偽証をこれまた淡々とやってのける、何もかも飲み込む底なし沼のような怖さは、相当なものだと…
 そんな茫洋とした得たいの知れない怖さを醸し出すのは、かなり高度なワザなのではないでしょうか、牧田明宏さん!


 田島令子さん演じる占い師・ユウリの“怖さ”は、観る人の考え方を映し出すものになりそう。
 全ての発端となる劇のラストシーン=占いのシーン、彼女がしているのは客観的に観て山田まりやさんのためになるごくもっともなアドバイスなだけに、その後悲劇を呼ぶきっかけとなったそれが、自分を捨てた男の妻に対する害意をどれだけ含んでいたか考えるかによって…
 …あるいは、害意があったとしても、それはその立場に立たされた人間としてごく自然な感情で、それほどぞっとするような“怖さ”は感じられないのでは? という考え方もあり。
 田島令子さんのユウリは、そういう観る者の心を映し出す鏡になり得るようなニュートラルな感じで、全体のバランスとしてもそれが良かったような。


 山田まりやさんの姉、事件の“被害者”、星野園美さん(初演時も同役)。
 母の死後、妹に執着するその心の闇も掘り下げたら“怖さ”に着き当たることもあるのだろうけれど、この物語では描かれず。
 “姉”の“怖さ”に触れず、ある種モノのように扱うところが、この物語というひとつの人間の視点の“怖さ”かも。


 山田まりやさんの夫・鈴木省吾さん(初演時も同役)。
 森本亮治さんが2005年2月に出演された『歩兵の本領』で拝見してます。
 この舞台を“怖さ”というキーワードで観るようになったのは、鈴木省吾さん夫ゆえ!
 山田まりやさんの怯え方が迫真だったせいもあるのですが、この人がちょっと動くだけで、むちゃむちゃ怖かったんです!!
 実際に山田まりやさんに暴力をふるうに至るところまでは描かれることはなかったのですが、何をしでかすのかわからない的怖さが。
 暴力的なものを感じさせたり、すさんだ感じのある“怖さ”という点では森本亮治さんの役と共通していますが、役の重さからいっても、こちらの方がスケール大。
 そんな、最初は圧倒的に思えた鈴木省吾さんの“怖さ”が、物語が進行するにつれてどんどん相対化していくあたりが、感覚として非常に面白く。


 ストーリーは台本を文字で再読しても面白そう! と思うほど面白く、キャストさんも皆さんハマっていて、理屈抜きの感覚的な部分(“怖さ”の増減は、かなり皮膚感覚的)でも楽しめて、で、チケットが安くて(笑)、ものすごくコストパフォーマンスのいい舞台でした!

 と、森本さんが今回演じられた“なんでも屋”(依頼されれば“えっち”や“話し相手”もあり)というお仕事、『bambino』とおんなじ! ということで、『bambino+』も楽しみに!



作・演出:和田憲明
出演:山田まりや 田島令子 森本亮治 牧田明宏 星野園美 鈴木省吾
新宿THEATER TOPS 2006年11月17日(金)〜26日(日)

(ゲストブック書き込み:2006年11月19日)



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