愛の劇場
愛のうた!
第29話
犯した罪の記憶
Staff & OA
脚本 ◆ 山浦雅大 演出 ◆ 山崎統司その他のスタッフ ◆ 【愛の劇場『愛のうた!』 スタッフ&キャスト詳細データ】へ
放送日時 ◆ 2007年12月6日 13:00〜13:30
◆公式サイト◆
【TBS公式:愛の劇場『愛のうた!』】【TBS公式:番組情報−愛の劇場『愛のうた!』】
◆参考サイト◆
【TBS公式:テレビ番組表−2007年12月6日】【ドリマックス公式:ドラマ−愛の劇場『愛のうた!』】
Cast
黒川亜紀:雛形あきこ黒川 楓:荒井 萌 黒川紅司:泉澤祐希 黒川花梨:三好杏依
木村晃:渋江譲二 内田麻里:橘 実里 蒔田亮介:天野浩成
三上里香:阪田瑞穂 小峰 舞:金澤美穂 小峰直也:嶋 大輔
桜井慶太:兼子 舜 なかみつせいじ 五味良介
琢磨:堀越光貴 幸治:高橋征也 勝:小倉史也
芸プロ テアトルアカデミー
黒川源三:左右田一平 黒川千歳:大森暁美 ほか
Story
中傷ビラに書かれている内容は全部本当のこと、という晃(渋江譲二)に、それは人を殺したということか、と問いかける亜紀(雛形あきこ)。晃は答える。「はい。そのとおりです」
どうしてそんなこと、という亜紀に、晃は、無言で一礼して歩み去った。
居間で亜紀が中傷ビラをにらみつけていると、千歳(大森暁美)がやってくる。
亜紀は千歳を花梨もいる部屋から連れ出し、晃が殺人犯だなどと書かれているビラを見せ、晃がここに書いてあることは全部本当だと言っていることを伝える。
すると、源三がやってきて、相手にするな、と、動揺する二人を一喝する。
夕食の席で花梨はまた、晃に教えてもらって縄跳びが跳べた話をする。それだけうれしいのだ。
また縄跳び教えてね、という花梨に、うん、と微笑んで答える晃にも、亜紀は疑惑の目を向けてしまう。
翌朝、紅司が登校すると、晃が殺人犯だという張り紙を琢磨(堀越光貴)が持ってくる。
勝(小倉史也)によると、学校のすぐ前の掲示板に貼ってあったらしい。
ここに書いてあることは本当なのか、という幸治(高橋征也)、もし本当だったらヤバくない?という勝に、紅司は不安を募らせる。
牧場では、顔見知りの宅配便の業者までが、亜紀に大丈夫か、と声をかけてくる。晃が殺人者だというチラシが配られていたというのだ。
気をつけることにこしたことはないよ、と言われ、亜紀は複雑な表情に。
そして麻里までもが、亜紀には悪いけれど自分もちょっと怖い、自分も臨月が近い時期だし…と、正直な気持ちを言ってくる。
工房で晃は集中できず、ろくろ作業も失敗。
そんな晃に、周りが騒がしいがあまり気にするんじゃないぞ、と源三。
どうぶつ王国では、慶太が、楓の家にいる晃は平気なのか、と楓に聞いてくる。
変な噂が立ってしまっているので、心配になっちゃって、という慶太に、楓は、そんなこと聞かれても私だってわかんないよ、としか言えない。
ごめん、と慶太は謝るが…。
亜紀が喫茶店《三匹の猫》を出ると、先日晃を訪ねてきた女性(阪田瑞穂)が亜紀を待っていた。
《三匹の猫》のテーブルで亜紀と向かい合ったその女性は、三上里香、三上修治の妹だと名乗る。
直也が気を利かせて外に出かけたところで、亜紀は、最近晃が犯罪者だというチラシが貼られていること、晃がそれは本当のことだと言っていることを教え、晃に昔何があったのか里香に尋ねる。
すると里香は、私のせいなんです、兄は悪くないんです、それは全部私を助けるためなんです、という。
里香が高校生のとき、アルバイト先の先輩が里香のストーカーのようになっていて、兄に相談して警察に行ったがあまり相手にしてもらえないという状況があった。
ある夜、里香は急に襲われ、助けに入った晃とその男がもみあっているうちに、はずみで男が柱に頭をぶつけ、打ちどころが悪く死んでしまったのだ。
晃は逮捕され、刑務所で四年間の刑期を終え、ようやく出てきたが、ある日突然いなくなってしまった。
里香に迷惑がかかると思ってのことだと思うが、そんなことないのに…という里香。
二人の両親は、里香が幼いとき事故で亡くなっているという。
里香は結婚することになり、相手も兄のことは全部わかってくれているので、何としてでも結婚式に出席してもらいたいと思って必死に探し、やっと晃を見つけ出したのだった。
それなのに兄は帰れと言う、式に出てくれといってももう関係ないと言う、関係ないわけないじゃないですか、たった二人の兄妹なのに…と里香は言う。
兄はもう十分すぎるぐらい償ったそれなのにどうして…という里香を、亜紀は放っておけなくなった。
亜紀は東京の亮介(天野浩成)に頼み、晃の事件について調べてもらう。
晃は“妹が襲われ、兄が犯人を殺害”という見出しのネット記事を読み上げる。
そこには、7年前の11月8日、大学生・坂元雄一が、台東区の公園で当時20歳の会社員だった晃ともみ合いになり勢いよく倒れ柱に頭を打ち死亡したこと、坂元は当時17歳だった晃の妹のアルバイト先の先輩で、アルバイトの帰宅途中晃の妹が、つきまとっていた坂元に襲われ、通りがかった晃ともみ合いになった、と、ほぼ亜紀が亮介に話した通りのことが書かれていた。
何か大変そうだな、と亜紀を案じる亮介に、まあね、と亜紀。
さらに亮介は、妹の前から姿を消した晃の気持ちもわかるような気がする、という。編集者をやっているといろいろな話が入ってくるが、聞くとやはり犯罪者の家族はそれだけで白い目で見られ、本人は何も悪くないのに差別されてしまう…
「だから晃さん、妹さんのこと考えて、自分から離れていったんじゃないのかな」という亮介の言葉に、亜紀は深く考え込む。
亜紀が台所で夕食の準備にとりかかっていると、花梨がやってきて、晃が悪い人だ、人殺しだといって、みんなが花梨をいじめるという。
違うよね、晃兄ちゃん、そんなことしないよね? という花梨に、亜紀は答えられない。
その会話を、台所の外で、晃が聞いてしまっていた。
工房で土をこねていた紅司も、晃が入ってくると急に、今日は宿題やりたいから部屋に戻るね、と、部屋に駆け戻ってしまう。
部屋に戻った紅司は、晃が人を殺したというのは本当だろうか、と楓に聞く。
私に聞かれたってわからない、本人に聞けるわけないし、と返され、もし本当だったら僕…と、不安げな表情になる紅司。
そんな二人に、花梨は、晃兄ちゃんいい人だよ、すごい優しいいい人だもん、と断言する。
それを聞いて楓も、そうだよね、晃さんそんな悪い人には見えないもんね、といい、紅司には、信じてあげるしかないんじゃないの、と返す。
そう言われても紅司の表情は晴れない。
工房でろくろを回している晃に、亜紀は、晃の妹に晃のことをいろいろ聞いた、と話しかける。
晃は、隣の町で強盗事件があり、刑事が何か知らないかと聞きに来た、それを知った誰かがあのチラシを…と話し、こんなことで皆さんにご迷惑かけてしまって申し訳ないです、と謝る。
俺は人を殺しました、といって、胸にかけた十字架のネックレスを握りしめる晃。
刑期を終えて出てきても、やっぱり前のようにはいきません、周りは俺を避けて白い目で見て、仕事だってそう簡単には、と晃は出所後の苦境を打ち明け、あいつにもずいぶんつらい思いをさせました、と、妹について口にする。
だから東京に出て職を探しているとき、こちらで源三が拾ってくれた、それで名前を偽りここで生活を、と話す晃に亜紀は、里香はどうしても晃に結婚式に出席してほしいと言っていた、と、里香の願いを伝えるが、晃は、自分はもう里香とは関係ない人間だという。
罪はもう償ったでしょう、と亜紀が言っても、それでも犯した罪は消えない、今もこうして騒がれている、という晃は、自分と縁を切ることが里香の幸せにとってはいいはずだと言い切る。
千歳は亜紀から話を聞き、一番つらいのは晃であり、とにかく今は晃に見方してやれるのは自分達だけだから、温かく見守ろうという。
そんな千歳の言葉に、亜紀は笑顔になる。
工房で、作りかけの作品を前に晃は考え込んでいた。
中傷チラシが貼られた玄関、晃さんはそんなことしないよね?という花梨…さまざまなことが晃の脳裏をよぎり、晃は胸の十字架を握りしめる。
翌朝、晃が出て行った、と源三。
“皆さんにこれ以上ご迷惑をかけないうちに 出て行こうと思います
今まで本当に ありがとうございました 晃”
という書き置きが残っていた。
晃兄ちゃん、いなくなっちゃったの? と花梨。
黒川家は重い空気に包まれる。
Check! −天野さん亮介的みどころ−

天野さんが会社員役で、そのオフィスが映る、という映像は、これまでありそうでなかったので、ちょっと感動。
天野さん亮介くんひとりのためにこれだけの空間が用意され、エキストラさんもちゃんと5〜6人動いているのも、贅沢な感じ。

読み上げた後の「けど、その晃さん」と横を向いて足を組むしぐさを見ても、机や椅子のサイズが合っていないように見えるほど、身体がおっきいんだなー、と。
(パソコンをのぞき込むところは背中を丸めてうんと体を縮めて、という感じだし、横に伸ばしてやっと組めた足は、机に向かうと机の下に収まらなさそう…)

「あった! そのじけんのきじ」にはじまって、一応すらすら読み上げていつつも、ちょっとだけ舌足らずのコドモっぽい口調での読み上げ。
そのおかげで事件の生々しさが薄れ、とくにたどたどしく読まれた“みかみしゅうじ”の悪い人感などは、ほぼ皆無に(笑)

その亮介の言葉を受ける、亜紀らしいきっぱりとした感じ、亮介との関係のカジュアルさはそのままに、沈んだ感じと緊張感をはらんだ「そっか」も秀逸。
亜紀&亮介コンビ、息が合ってるなあと、こういう細かいところでも。

必要以上に深刻ぶったり、晃の過去に大騒ぎしたりせず、それでも実際の亜紀の大変さを見舞うさらりとした「なんか、大変そうだな」、亜紀と亮介の間の会話らしいなあと(ただし、それを受けての亜紀の“まあね”は、あまり亜紀と亮介の間らしくなく、沈んで重く)。
…と思ったものの、亮介がことさらにさらりとそのへんを流す理由は、続く亮介の言葉にあるのかも!

「彼の家を出た気持ちも、わかるような気もするけどね」、すごくしみじみとして、意外なほど。
「ほら、編集者なんてやってるとさ、いろいろな話が入ってくるだろ。で聞くと、やっぱり犯罪者の家族って、それだけで白い目で見られるんだ。本人は何も悪くないのに、差別されちゃって…だから晃さん、妹さんのこととか考えて、自分から離れていったんじゃないのかなあ」と、自らは愛されてしあわせに育った雰囲気のある亮介の、情報を得ての想像力のようなものを感じさせる内容と口調。
そして、そういう視点があったからこそ、亜紀のことを必要以上に心配してみせたり、晃の過去について騒ぎ立てたりしなかったのかなあ、と。

黒目がちの瞳の視線が、話すにつれ天を仰いだり、左右に揺れたり。
「やっぱり犯罪者の家族って、それだけで白い目で見られるんだよ」は、本編では亜紀の映像+電話を通した亮介の声のところ、前日の予告映像は亮介の映像+電話を通さない亮介の生の声という組み合わせをみせてもらえて、大感謝!!