愛の劇場
愛のうた!
第33話
死んだはずの母
Staff & OA
脚本 ◆ 山浦雅大 演出 ◆ 山崎統司その他のスタッフ ◆ 【愛の劇場『愛のうた!』 スタッフ&キャスト詳細データ】へ
放送日時 ◆ 2007年12月12日 13:00〜13:30
◆公式サイト◆
【TBS公式:愛の劇場『愛のうた!』】【TBS公式:番組情報−愛の劇場『愛のうた!』】
◆参考サイト◆
【TBS公式:テレビ番組表−2007年12月12日】【ドリマックス公式:ドラマ−愛の劇場『愛のうた!』】
Cast
黒川亜紀:雛形あきこ黒川 楓:荒井 萌 黒川紅司:泉澤祐希 黒川花梨:三好杏依
木村晃:渋江譲二 内田麻里:橘 実里 蒔田亮介:天野浩成 小峰直也:嶋大輔
内田守:新妻大蔵 桜井慶太:兼子 舜
宇喜多礼子(声):いしのようこ 内田守(新妻大蔵) 桜井慶太(兼子舜)
黒川源三:左右田一平 黒川千歳:大森暁美 ほか
Story
黒川家に一本の電話がかかってきた。電話に出た亜紀(雛形あきこ)に、電話の主は宇喜多レイコ(いしのようこ)と名乗る。
レイコは6年前に幼かった楓(荒井萌)、紅司(泉澤祐希)、花梨(三好杏依)を捨てて出て行った母親だった。
レイコは姉・美津代から、亜紀のことと黒川家の番号、子供達が那須で一緒に暮らしていることを聞いたと言い、子供達に会わせてもらえないかと亜紀に頼む。
亜紀は千歳(大森暁美)に、レイコからの電話があったこと、子供達に会わせてほしいと言われたことを話す。
あの子達に伝えなきゃいけないですよね、という亜紀に、千歳も答えられない。
花梨が寝たところをみはからって、亜紀は楓と紅司を子供部屋から呼び出す。
二人を前に座らせ、亜紀は、三人の本当の母親から電話があったことを二人に告げる。
三人に会いたいと言っていることを告げると、楓は、会うわけがない、自分は会わない、と席を蹴って出て行ってしまう。
ゆっくりと立ち上がった紅司は、部屋を出る前に亜紀を振り返り、ごめんなさい継母さん、僕もどうしていいかわからないよ、お姉ちゃんきっと今もすごい恨んでて、だから…と、戸惑いを述べる。
亜紀は、那須に来る前に見た、母親に捨てられたことが原因で、人に対する強い不信感を露わにしていた楓の様子を思い出す。
明かりもつけない部屋で、膝を抱えて考え込んでいた楓。
紅司は電気をつけ、楓は母親に会いたくないのかと問いかける。
当たり前でしょ、という楓は、どうしたいか逆に聞かれて口ごもる紅司を、勝手にすれば、と突き放す。
花梨にはこのこと言うの? という紅司にも、言えるわけないでしょ、花梨には死んだってことにしてあるんだよ、という楓は、そうだけど…という紅司に、あらためて口止めをする。
稲穂の遺影の前で、稲穂の五円玉を握りしめ、亜紀は悩んでいた。
ふざけないでよ、会うわけないでしょ、何考えてんの、という楓。
僕もどうしたらいいかわかんないよ、という紅司。
私、どうしたらいいの? と、亜紀は稲穂に問いかける。
翌朝の朝食の席で、花梨は楓と紅司に元気がないことに気づき、それぞれに声をかける。
理由を言うわけにもいかず、楓は、食欲がわかない、と、食事もそこそこに席を立つ。
喫茶店《三匹の猫》で、亜紀は直也(嶋大輔)、守(新妻大蔵)、麻里(橘実里)にレイコからの電話のことを話すが、皆、子供達の母親は死んだと思っていた。
自分もどんな人かは知らない、という亜紀に、直也は、今まで連絡もしてこなかった母親に会わせることはない、身勝手もいいところだと言う。
が、麻里は、血がつながった親子なら、会いたいという気持ちはわかるような気がする、きっとその人もいろいろ考えている、と。
直也はなおも、俺は反対、と主張し、マスターが決めることではない、と守にたしなめられる。
考え込んでいた亜紀は、早退を申し出る。
源三(左右田一平)は作業場で、年内にもう一度火を入れたい、急がせてすまない、と晃(渋江譲二)をねぎらう。
そこに、千歳がやってきて、レイコからの電話のことを源三に告げる。
だから楓は様子がおかしかったのか、という源三に、何か大変なことにならなければいいんですけど…と千歳。
楓から話を聞き、そっか、お前の母親生きてたんだ、と慶太(兼子舜)。
思い悩んだ様子の楓の横顔を見て、何かいろいろあるんだな黒川、と楓を思いやる。
で、どうするの? と聞かれ、会うわけがない、今更会いたいと言われても虫が良すぎる、こっちの気持ちなんて全然考えないで…という楓に、けど本当のお母さんなんだろ? と慶太。
お母さんなんて思ってないから私…と言い切った楓だったが、その表情は複雑だった。
亜紀に呼び出された場所に息を切らせて走ってきて、亜紀! と呼ぶ亮介(天野浩成)。
楓は家に帰り、バスケットの奥の方にしまってあった小箱の底から、一枚の写真を取り出す。
亮介、知ってるんだよね? そのレイコさんって人のこと、と亜紀。
まあ…と、亜紀の方を見ないで答える亮介。
レイコは、雑誌の編集長をしていた亮介の先輩で、稲穂がまだ新人イラストレーターだった当時の担当だった、二人はつきあい始めて結婚したらしい…と話す亮介に、どんな人? と亜紀は尋ねる。
きれいな人だったよ、真面目で思いやりもあって、優秀な編集者だった、稲穂さんとうまくいくと思ってたんだ…と亮介。
しかし5〜6年前、取材先で出会った人といわゆる不倫関係に陥り、レイコはある日突然出て行った。急に男手一つで子供三人の面倒を見ることになって、稲穂は大変だったと思う、結局家庭も仕事も捨てて、その人と海外に行ったらしい、と、亮介はレイコが子供達を捨てたときのことも亜紀に話す。
その頃、楓は、小箱の底に大事にしまってあった写真をみつめていた。
それは、幼い楓と一緒に微笑む、母・レイコの写真だった。
その後のことは俺もよく知らないけど、急に電話してくるなんてな、どうするんだよお前、と亮介。
正直困ってるの、と亜紀。
会わせてあげたほうがいいとは思うけど、それはいやだという自分もいる、あの子達を置いて出て行ったような人に、なんで今更会わせなければならないのかと…けどそれでもあの子達の本当のお母さんなんだよね…と思い悩む亜紀を見て、亮介は言葉を失う。
亜紀が帰宅すると、庭で、紅司が晃に実母からの電話について相談していた。
お前はどうしたいんだ、と晃に聞かれた紅司が、僕はお母さんに会いたい、と答えたのを聞き、亜紀は衝撃を受ける。
風邪を引いて熱を出したとき一晩中起きて横にいてくれた母親のことを覚えている、楓は母親のことを恨んでいるようだが、自分はそれよりも会いたいと思った、と、紅司は正直な気持ちを打ち明ける。
そのこと亜紀さんには言ったのか? という晃に、言えないよそんなの、だって継母さんに悪いもん、という紅司の言葉を聞いて、晃も困ったようなな表情に。
その様子を見て、亜紀はさらに考えに沈む。
家の中で千歳は亜紀に、子供達を母親に会わせるか決めたのかと聞く。
楓は会いたくないと言っている、ただ紅司は…と言いかけた亜紀に、花梨には話したのか、と千歳。
まだ話していない、花梨には母親は死んだと話していたようで…と聞くと千歳も、それは簡単に話せない、とうなずき、亜紀はどうしたいのかを尋ねる。
どうしたらいいか…と言いつつも亜紀は、自分にはあの子達を止める権利はないから、と答える。
亜紀は改めて楓と紅司に、お母さんに会ったほうがいいのでは、本当のお母さんなんだから、と話す。
私は会わない、どうして会わなければならないのか、あの人の勝手な気まぐれになんでつきあわなければならないの、という楓は紅司に、あんたは会いたいんでしょ、一人で会ってくればいいじゃない、私は会わないから、といって、席を立とうとする。
紅司は、花梨はこのことを知ったらどう思うだろう、花梨には言わなくていいのか、と言う。
言えるわけないじゃない、という楓に、花梨にも知る権利はると思う、ずっと黙ってるわけにはいかないんだから、今ちゃんと話してあげたほうがいいと思う、と、紅司ははっきり告げる。
楓が一人で決めていいことではない、という紅司に、楓も、花梨にちゃんと話す、と心を決める。
それでもしあの子が母親に会いたいというなら、自分もついていく、自分は花梨の姉だから、その義務はあると思うから…とも宣言する。
子供部屋に戻った二人は、花梨を前に座る。
紅司が花梨に、本当のお母さんのことを覚えているかと聞くと、だってお母さん、死んじゃったんでしょ? と花梨。
そこで紅司は、今まで花梨には黙っていたが、本当は母親は生きていること、生きて自分達に会いたいと言っていること、ずっと連絡がなかったけれど電話があったことを話す。
もし花梨が会いたいっていうなら…と言いかける楓を遮り、では楓達は自分に嘘をついていたのか、と花梨。
嘘をついていたことを認め、ごめんね、という楓・紅司に、嘘つき、お姉ちゃんとお兄ちゃんの嘘つき、と言い放ち、花梨は部屋を飛び出してしまう。
Check! −天野さん亮介くんみどころ−

亜紀の一大事に、「亜紀!」と呼びかける声も、いつになく切実。
クラシックなスタイルながら裏地の白がモダンな黒のコートをスーツの上に羽織ったスタイル、とてもお似合い!

そんななにげない行動にも、優しさが。
あまり亜紀に近寄らず、手を伸ばして渡すあたり、『愛のうた!』で一貫している亮介と亜紀の繊細微妙な距離感を表しているようにも、今回の話題の機微さゆえのようにも。

遠景から撮られた小さな立ち姿でも、天を仰ぐようにしたり、少し身体を揺らしたりと、答えにくい質問をされての動揺が。
揺れるコートの動きが、気持ちの揺れを伝えるよう。

亜紀の方を見ないで話す、硬い表情の横顔に、亜紀にとってつらいかもしれない話をする苦渋が。
缶飲料を、身体の前で、両手を揃えて握りしめた手の表情にも、根が生真面目で亜紀のことをとても大切に思っている亮介の素朴な困惑がにじみ。

アップになったときの、うつむき加減の表情、ほんとうに沈んだ様子。
少し長めの前髪を下ろした姿、高校生のようなあどけなさ。

“きれいな人だった”という答えも、真っ直ぐに前に視線をやって話す横顔も、話の合間にきゅっと口許を引き結ぶ様子も、少年的。
亮介くんの向こうにある緑の木々が、陽の光で縁が金色に染まっていて、ほんとうにきれいな絵。

子供達の母親にふさわしくない人、だから会わせることなんてない、と、全面的に亜紀の味方ができれば楽なところを、そうはできず、本当のことを訥々と話すしかない誠実さ。
「稲穂さんとうまくいくと思ってたんだ」と、少年のような横顔で当時の素朴な予測を振り返る亮介くんが、そう思っていた稲穂と亜紀が結婚することになって、どれだけ複雑な気持ちだったかと思うと、ぐっとくるシーン。

“不倫”という言葉が、こんなに生々しくない語りも、なかなかないのでは。
そのあとすぐ「ある日突然出て行って…稲穂さん、大変だったと思うよ、急に男手ひとつで子供三人の面倒見ることになってさ」と、“不倫”の男女の関係を思わせる側面から即刻、子供達という家族の問題に転換、さらに生々しさをかき消すという、『愛のうた!』にふさわしい話運びと、ピュア感いっぱいなちょっとたどたどしい天野さん亮介くん口調。
「結局、仕事も家庭も捨ててその人と海外に行ったらしい」と、再び男女の逃避行的な話に戻っても、“お母さんは遠いところへ行ったんだよ”ぐらいの雰囲気。

でも次の「どうするんだよお前」では、いつもの亮介らしく、亜紀の方を向いて、カジュアルな口調で。
そんな亮介には、ちょっと安心感が。

亜紀をしっかり見ていた視線を落とし、また隣の亜紀から前方に顔の向きを変えてうつむき、それから前方を真っ直ぐ見るもとの態勢に。
亜紀が困っていることが、亮介にとっても、相当なダメージなのだと伝わり。

強い視線前を真っ直ぐに見ていたのに、亜紀の揺れる気持ちを聞くと、うつむいてから、亜紀の様子をちらりと窺うように一瞬だけ見る様子、亜紀の揺れが伝わって共に揺れている感じ!
あの子達を置いて出て行ったような人に、なんで今更会わせなければならないのって…という言葉までは、亜紀のほうにやや顔を向けて、でも亜紀を正面きって見ることもできないで、と微妙な角度で心持ち上げていた顔を、また前方に向けてうつむいてしまい。
けど、それでもあの子達の本当のお母さんなんだよね…といって言葉を亜紀が途切れさせると、今度はじっと亜紀をみつめ。
このへん、カメラワークも、“亜紀のアップと言葉→亮介の反応”のシークエンスの繰り返しで、亮介の反応の“動”で、ぼう然と言葉をつぶやき続ける“静”の亜紀の気持ちの揺れを表現しているよう。
亜紀の分身のような、亮介くんならではの見せ場!!