愛の劇場

愛のうた!

第3話
父との涙の約束



Staff & OA
脚本 ◆ 武田有起  演出 ◆ 加藤章一
その他のスタッフ ◆ 【愛の劇場『愛のうた!』 スタッフ&キャスト詳細データ】
放送日時 ◆ 2007年10月31日 13:00〜13:30

◆公式サイト◆
【TBS公式:愛の劇場『愛のうた!』】
【TBS公式:番組情報−愛の劇場『愛のうた!』】
◆参考サイト◆
【TBS公式:テレビ番組表−2007年10月31日】
【MBS公式:愛の劇場『愛のうた!』】
Cast
黒川亜紀:雛形あきこ
黒川紅司:泉澤祐希  黒川 楓:荒井 萌  黒川花梨:三好杏依
保科静代:岡まゆみ  蒔田亮介:天野浩成  野本美津代:栗田よう子  笠松裕一:正城慎太郎
女子社員1:太田彩乃  女子社員2:南まりか  キャバクラ店員:赤城裕斗  笠松家の長女:田中 明
芸プロ  テアトルアカデミー
黒川稲穂(回想):岡田浩暉  ほか
Story
子供たちのことが気になって、稲穂(岡田浩暉)が亡くなって2週間になっても、亜紀(雛形あきこ)は仕事も手につかず、同僚の女子社員達の話題になるような状態。

下校途中の紅司(泉澤祐希)を、通学路で楓(荒井萌)が待っていた。
花梨は元気だという楓だったが、紅司を引き取った伯母には、紅司への電話も取りついでもらえないという。
伯母の口うるささをこぼす紅司に、楓は、また三人で暮らせるようにと、アルバイトを始めたと言う。
耳元でこっそり、そのアルバイト先がキャバクラだと告げられ、紅司は驚き、楓のことを心配する。

その頃花梨(三好杏依)は、学校からまっすぐ伯父の家に帰らず、公園で自分が描いた家族の絵をみつめて座り込んでいた。
従姉(田中 明)が優しく迎えに来ると、素直に手を引かれて帰る花梨だったが、その表情は沈んだまま。

亜紀の母親がやってきて、もう稲穂のことも子供達のことも全部忘れて、早く家に帰ってくるようにと言う。
そこに、楓が暮らす施設から、楓の帰りが遅いがそちらに行っていないか、と電話がかかってくる。
亜紀は花梨が引き取られた伯父の家、紅司が引き取られた伯母の家に電話し、楓が行っていないことを確かめる。
さらに自分の携帯から楓に電話しようとしたところを、母親に止められ、子供達のことは忘れなさい、と釘を刺される。

しかし翌日、亜紀は下校する楓をつかまえ、稲穂が知ったら悲しむようなことはしないで、と言う。
しかし楓は、関係ないでしょう、私達のことを引き取ろうともしなかったくせに、私達を見捨てたくせに、と亜紀を非難して去る。

その夜、楓の言葉を思い起こし、亜紀は稲穂の遺影に、どうしたらいい? と語りかける。
そこに、亜紀の高校時代の同級生・蒔田亮介(天野浩成)が訪ねてくる。
蒔田はイラストレーターだった稲穂が一番頼りにしていた編集者で、亜紀と稲穂の出逢いのきっかけを作った人物だった。
こんな大変な時に出張なんてごめん、という亜紀に、仕事が忙しいのに、来てくれただけでも稲穂は喜ぶ、亮介は一番頼りにしていた編集者だったから…と亜紀。
その頼りにされていた俺が泣く泣く譲った女を置いて、なんで逝っちゃうかなあ、という亮介は、同窓会の流れて行った店で稲穂がすっかり亜紀を気に入ってしまった、こんなことなら行きつけの店になんか連れていくんじゃなかった…と、1年前に亜紀と稲穂の出会いのきっかけを作ったことについて、冗談めかして後悔してみせる亮介。仕事は今は順調だが、稲穂のように、気軽にいい絵を描いてくれる人はいない、これからが大変だ…と、稲穂を惜しむ。
これからどうするんだ、という亮介の問いに、お母さんは戻って来いって行ってくれてるんだけど…と言いよどむ亜紀に、亮介は亜紀が子供達のことを気にしていることをすぐに察し、やめとけよ、と静止する。
危ないんだよ危ない、こういうときにスイッチが入ると走り出すんだよお前は、だめだぞ、行動する前によーく考えろ、人間にはできることとできないことがある、だから…と、亜紀の性格をよく理解している亮介が亜紀を止めようとしていると、玄関のチャイムが鳴る。

やってきたのは、紅司だった。
お邪魔でしたか、などという紅司に、何言ってんの、と亜紀は笑い、亮介に紅司を紹介する。
亮介も自己紹介し、自分が亜紀の高校時代の同級生で、亜紀と稲穂の出会いを作った張本人だと紅司に告げる。
用件をたずねると、紅司は、継母さんにひとつお願いがある、と切り出す。

楓がキャバクラで働いていることを紅司から聞かされた亜紀は、楓が働くキャバクラに乗り込もうと突き進んでいた。
紅司と一緒についてきた亮介は、ヤッバいぞヤッバい、スイッチどころかトップギア、と、突進する亜紀を指差す。
中学生でキャバクラなんてあり得ない、アッタマきた、とっちめてやる! と熱くなる亜紀に、ほら…とため息をつく亮介は、行くぞ! と紅司をうながして、亜紀の後をついて走り出す。

キャバクラに乗り込もうとした亜紀だったが、女性客はお断りと店員に阻まれる。
結局、中学生が働いてることがわかったらどうなるか、まさか知らないわけないよね、と強行突破した男の亮介が中に入って、楓を無理やり連れ出してきた。
お父さんを悲しませるようなことだけはしないでと頼んだはずだよ、という亜紀に、お父さんが悲しむはずがない、私達を置いて死んじゃったんだから、みんなみんな私達を見捨てる、勝手なんだから! と、楓は感情をぶちまける。
そんな楓に、悲しいのは楓だけじゃない、亜紀もどうしたらいいかわからないぐらい悲しい、しかし一番悲しくて悔しかったのは、可愛い子供達を置いて逝かなければならなかった稲穂だと亜紀は訴える。
しかし、父親が悲しんだとしても自分はやめない、三人が一緒に暮らすにはこれしか方法がないから、と楓。
そして、ただの継母だから、亜紀にはやっぱり関係ないという。

そのとき、亜紀の携帯に、花梨を引き取った伯父から、花梨がいなくなったとの連絡が入る。
必死に走り回って花梨を探す亜紀、楓、紅司、亮介。
思い当たるところは全部探した…というとき、亜紀は、皆がこれから暮らそうとしていた家、今亜紀が住んでいる部屋に行っているのでは、と思い至る。

花梨はやっぱり、これから暮らすはずだった新居の前で眠り込んでいた。
いったん部屋に入り、亜紀が花梨を伯父の家に送り届けようとすると、花梨はそれを拒絶する。
「だってパパ言ったもん。朝ごはんと、夕ごはんは、かぞくでいっしょに食べるって。
必ずいっしょに食べるって言ったもん」
亜紀は花梨が抱えてきた、家族の絵をみつける。
自分も描かれているその絵を見て、亜紀はあらためて、家族のルールを決めた稲穂のことを思い出す。
「なんで? パパと約束したのに、どうして誰も約束守らないの? なんで?」
泣きながら問いかけてくる花梨に、亜紀は、思わず口に出していた。
「一緒に暮らそう。4人で、一緒に暮らそう」

Check! −天野さん亮介くんみどころ−

愛の劇場『愛のうた!』亜紀がドアを開けると、立っている天野さん亮介くん。
「よう」という声、カジュアルな挨拶でも、声には落ち着き。
こんな悲しいときに、そういう挨拶ができる、二人の親しさが一気に伝わるセリフ。

愛の劇場『愛のうた!』稲穂の遺影に向かって、手を合わせる天野さん亮介くん。
きれいに揃えられた手、長い間じっと目を閉じて語りかけるような、故人への思いがにじみでるしぐさ。
端正で敬虔なこの姿のおかげで、後で亜紀に軽い口調で話してみても、その奥底の真面目さがよく伝わり。

愛の劇場『愛のうた!』「この間までぴんぴんしてたのに。こんなことになるなんてなあ」という亮介の感慨。
静かに沈んだ、でも過度に暗くないその口調、よく知った人の突然の死を知った反応として、リアル。
その後、ちょっとうつむいてからの「ごめんな。こんな大変なときに、出張なんて」と、明るく張った声との落差と、“つとめて明るい声を出している”感との合わせ技で、亮介の受けたダメージの姿が、浮き彫りに。

愛の劇場『愛のうた!』「仕事忙しいのに、わざわざごめん。来てくれただけでも、稲穂さん喜ぶよ。一番頼りにしていた編集者だもん」と、亜紀の口から語られる亮介の仕事ぶり。
『First Love』でも『GOOD LUCK!!』でも『デザイナー』でも『おいしいプロポーズ』でも、自分の仕事に誇りを持って働いている役どころを天野さんにくださる“勤労あまののTBS”、やっぱり!
“ルックスがかっこよく、憧れや思慕の対象、でも一難あり”という役が多いフジテレビと、どうしてこうくっきり差が出るのか(笑)。

愛の劇場『愛のうた!』「その頼りにされていた俺がさ、泣く泣く譲ってやった女を置いて、なんで逝っちゃうかなあ」というセリフ。
このシチュエーションで、そんな風に冗談めかして、亜紀への気持ちをストレートに口にする亮介のキャラクターを一発で印象づける、シナリオ的にもポイントなセリフ。
【ドラマ30『デザイナー』第1話】で、天野さん演じる明くんの撮る亜美の写真が最高と評判、と編集者にほめられたときに亜美に言う「そっか。写真にオレの愛がにじみ出てるってことかあ」と、かなり近く(相手の返すセリフも、亜美「冗談はもういいわ」、亜紀「冗談は顔だけにしてください!」と、ソックリ!【笑】)、『砂時計』キャストの大量起用にはじまり、劇中キャラクターを間違いなくイメージ通りに演じられるという具体的な過去実績のあるキャストさんでがっちり固めている感のある『愛のうた!』に天野さんがいるのは、『デザイナー』の明くんがあったからなのかも…と。
でも、亮介くんのこのセリフ、『デザイナー』明くんのセリフよりぐっと低く落ち着いて大人っぽく、“明くん”とは違った“亮介くん”というキャラクターが、さらにくっきりと。

愛の劇場『愛のうた!』亜紀の「何言ってんだか。冗談は顔だけにしてください」が明るく親しげな口調だったせいか、亮介くんがオトナなせいか、一度亜紀の結婚という諦めが入っているせいか、明くんほどしょんぼりしなかったように見える亮介くん。
「冗談じゃないだろ。同窓会の流れで連れてった店で、すっかりお前のこと気に入ってさあ。こんなことなら行きつけの店なんか連れてくんじゃなかったよ!」というセリフのスネた感じにも、ややオトナの余裕が。
「またその話? もう1年の前の話じゃない」という亜紀のセリフはつまり、亮介くんがこれまでにも何度もその話を繰り返したということで、「そりゃそうだけど」ではっきり表す未練とあいまって、諦めの悪そうな & その諦めきれないキモチを屈託なく口に出せる亮介くんの性格 & 亜紀との関係が、あざやかに。

愛の劇場『愛のうた!』仕事、順調? と聞かれての「まあね。でも、黒川さんみたいに気軽にいい絵を書いてくれる人がいなくてさ。これからが大変だ」。
本当に仕事をスムーズに進めていそうな亮介くんの働きぶり、稲穂の存在感、稲穂の妻の亜紀への亮介の気遣い等、いろいろ含まれたセリフ。
こういうセリフが似合う天野さん、ステキだなあと。

愛の劇場『愛のうた!』亮介くんの「これからどうすんだよ」に対する亜紀の「お母さんは、戻って来いって言ってくれてるんだけどね…」に返す「けど?」
ちょっとイントネーションが変わってる(?)ところが、カジュアルでさりげない感じ。
それに続く亜紀の沈黙で「お前…やめとけよ。」「何をって、気になってるんだろ、子供達のこと」と、亜紀の考えが即わかりなツーカー感にぴったり!

愛の劇場『愛のうた!』「危ないんだよ、危ない! こういうときにな、スイッチが入ると走り出すんだよお前は。だめだぞ。行動する前に、よく考えろ。人間にはできることと、できないことがある。だから」
強弱のリズムが特徴的な、テンポと歯切れのいいセリフ回し、これまでの天野さんキャラにない口調で、新鮮!!
その役者さんの、それまで演じてこられたイメージ通りの役柄を演じることが他の作品以上に期待されていそうなこの作品で、“これまでにない天野さんキャラ”が観られたというのも、スゴイかも!

愛の劇場『愛のうた!』小学生の紅司にも「どうも。蒔田亮介です」と、おじぎをしてみせるところが、洒脱な亮介くん。
「こいつの、高校のときの同級生。」には、さっきまであれだけ亜紀にアプローチをかけていたにも関わらず、稲穂の息子に対して稲穂の妻である亜紀との間に妙な関係はないとはっきりさせようとする、大人の良識が。
亜紀のことを真っ先に“継母”呼ばわりしていた紅司が「ただの…同級生?」と、疑惑の目を向けてくれていることで、亜紀には“冗談は顔だけにして”と片づけられていた亮介くんの男が上がったような!(【笑】 ありがとう紅司くん!)

愛の劇場『愛のうた!』「う〜ん、ただのじゃなくて」では、何を言い出すのかと思ったら(【ドラマ『チョコミミ』:第3回】のムムちゃんも、ずっとお友達でいよう、というチョコに「お友達以上でも、オレはかまわないぜ」とか言ってたし!)、「こいつとお父さんとの出会いを作った張本人でもあるかな」と、ドキッとさせた後、一番安全なオチをつけるという、子供相手に何ゲンワクしてるんですか! な話しぶり。
紅司の「それはなんというか…どうも」のリアクションがまたおかしく。

愛の劇場『愛のうた!』初対面を果たした直後のはずの、亮介くんと紅司のやりとり。
亮介くん「ヤッバいぞー、ヤッバい!」 紅司「何がですか?」 亮介くん「スイッチどころか、トップギア!」
…女性についてグチりあう、“男同士の連帯感”モードにもっていこうとしているような亮介くん!
小学生相手でも、完全な“子供相手”というより“男同士”な雰囲気になるところが、“亮介的”?
怒り心頭の亜紀を見ての亮介の「ほらぁー。行くぞ!」と、それに応じて「ちょっと!」と戸惑いつつ走り出す紅司の動きには、バディ物的なムードさえ!

愛の劇場『愛のうた!』キャバクラの前で亜紀が止められたときの「俺が行く。男なら問題ないだろ」と、すっと入っていく亮介くん。
この場でそれができるのは亮介くんだけ、という、ものすごいお役立ち場面!
店員に胸倉をつかまれても「中学生働いてることわかったらどうなるか、まさか知らないわけないよね」は、穏やかな口調でも、迫力。
(胸倉をつかんできた店員の手を、軽々握って引き離してるあたりの強力+出版社勤務でいろいろ対処法を握ってそうな感じも、パワー!)
…その口調が、『新宿スワン』で17歳の女の子を売り飛ばそうとした極悪ホスト・シンヤにちょっと似てるのも、密かなお楽しみポイント(笑)。

愛の劇場『愛のうた!』亮介に腕を掴まれ、強引に店外に連れ出された楓の「放して! あなた何なんですか! 放してよ!」。
“男女の修羅場”感あふれるセリフで、実年齢12歳(【チョコミミ】で天野さんがパパを演じている増山加弥乃さんより年下!)の荒井萌さんとそんなシーンを天野さん29歳が演じていることに、大感激!
最後の、楓の背中を亮介くんが押して亜紀の前に出させるところまで、味わい深く。

愛の劇場『愛のうた!』楓に向かって「あたしだって、どうしたらいいかわからないぐらい悲しいの!」と叫ぶ亜紀をみつめる亮介くん。
亜紀が悲しんでいることは驚くべきことではない、でも亜紀が訴えた悲しみの深さや、元気にふるまっていた亜紀がそれを口にしたことには、はっとするものが…という、複雑なリアクション。
楓→紅司→亮介、と順番にカメラが振られるので、そのつながりも大事そう。

愛の劇場『愛のうた!』花梨がいなくなった、という亜紀のつぶやきを受けての「いなくなったって、どういうこと?」という亮介くん。
「そんなのわかんない!」という亜紀のセリフがもっとも=ちょっとまぬけな問いかけ、とも、一番最初に会った紅司ともさっき会ったばかりで、黒川家の事情はほとんどわかっていない亮介にしてみれば当然の問いかけ、とも。
なんにせよ、亜紀が遠慮なく「そんなのわかんない!」という言葉をぶつけられる相手、というところに、亮介くんの存在価値。

愛の劇場『愛のうた!』皆で花梨を探し回るシーン。
最初は紅司単独→亮介単独、という画面割りだったのが、紅司+亮介の2ショット映像になり、最後には左右を見回す紅司&亮介の動きが完全にシンクロするに至るあたり、二人の間に何か絆が生まれているかのような流れ!
このまま二人で刑事モノでもやってほしい!! というぐらいのバディ感。
このまま紅司が那須に行ってしまって、一緒に行動する機会がなかったら残念すぎ!

愛の劇場『愛のうた!』亜紀の「おうち!」に続いての、亮介くんと亜紀のやりとり。
亮介の早口での「だから昔のアパートには行ってみた、でもそこにはいなかった」 亜紀「違う違う! みんなで住むことになっていた、今私がいる部屋!」
一連の流れとして、すごくいいテンポ!
雛形さんとのナイスコンビネーションに、かなり感動。

愛の劇場『愛のうた!』稲穂との約束を訴える花梨をみつめる亮介くん。
紅司と、男二人並んでの立ち位置、他のみんなと平等に振られるカメラ、と、まるで黒川家の一員のよう。
ほんの数時間前に紅司と初対面を果たしたばかりなのに、するっと家族の間に入り込んでいるさりげなさがまた“亮介的”なんだろうな…と。
素晴らしい表情を見せてくれている泉澤さん紅司と対になるように、天野さん亮介の表情が映し出されるのも、光栄。


★ Episode 2 ★ STORY INDEX ★ Episode 4 ★

Last update :
5th November 2007

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